ベトナムには弊社SHIFT ASIAをはじめ、既に日系だけでも数多くのシステム開発企業が進出していますが、今年に入って日系ユーザー企業自らがベトナム国内に開発拠点を新たに設立する動きが強まっています。いずれも共通するのが、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や新規事業の創出を目的にベトナムの優秀なエンジニアを活用しようという試みです。現在、日本では業種を問わず、多くの企業が経営課題としてデジタル活用に取り組んでいますが、そうした取り組みを促進するためにベトナムが選ばれていることは注目に値すると言えるでしょう。
公共交通事業者が相次ぎハノイに拠点を新設
日系ユーザー企業という括りで捉えれば、自社でWebサービスやアプリ、AIなどの開発や提供を手掛けているIT系スタートアップなどの進出は以前からあったものの、最近では非IT系のサービス企業がベトナムにソフトウェアの開発拠点を新設するケースが増えています。
特に日本の多くの企業が新たな会計年度を迎えた今年4月には以下のとおり、大手高速バス事業者のWILLERと静岡県浜松市を拠点に鉄道やバス事業などを手掛ける遠州鉄道の2社がそれぞれハノイ市内に開発拠点の新設を発表する動きが相次ぎました。
WILLER株式会社 プレスリリース(2021年4月1日)
WILLER、ベトナムVTI社とMaaSアプリの開発会社を設立
遠州鉄道株式会社 ニュースリリース(2021年4月8日)
ベトナム現地法人「遠鉄ベトナム有限会社」設立手続き開始について
このうち、WILLERはベトナムのテクノロジー企業、VTI社と合弁会社を設立する形で、同社が手掛けるオンデマンド型の新モビリティサービス「mobi」のほか、都市間移動サービス「trip」のサービス改善や機能強化などに取り組むことを明らかにしています。ベトナムを開発拠点に選んだ理由として、同社はこれまでVTI社と連携してタクシー配車アプリなどを開発した実績があったことを挙げています。また、WILLERはこれらのサービスを日本だけでなく、ベトナムやシンガポールなどでも現地展開する準備を進めており、ベトナムで開発を強化することで、商用化に向けたスピードアップを図る狙いもあると言えるでしょう。
一方、遠州鉄道は100%出資の子会社をハノイ市内に設立し、自社のWebシステムやスマートフォン向けアプリ開発を推進していく方針です。同社は2021年4月8付のニュースリリースで以下のように設立の経緯や目的に触れながら、ベトナム人の優秀なエンジニアを活用し、自社業務やサービスのデジタル化を推進していくとしています。
今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを推進し、社内業務だけでなく、ICT技術の急速な進歩で日々変化しているお客様の消費行動や価値観に対応するため、“お客様接点” のデジタル化をスピーディーに推し進めることが重要と判断し、この度の法人設立に至りました。IT 人材の活用につきましても、外国人留学生の採用をして参りましたが、現地法人においても優秀な技術者を採用し、新しい技術や発想を取り入れ、お客様の購買行動や要望に合ったシステムを開発することで更なるお客様満足につなげていきたいと考えております。
また、静岡新聞の報道によると、遠州鉄道は日本国内でITエンジニアの人材獲得競争が激しくなっている中、優秀な人材を求めてベトナムへの進出を決断したと言われています。同社は浜松市を地盤に運輸や小売り、不動産などの事業を展開している地方の伝統企業の1社ですが、例えば、地方の企業が日本国内でAI(人工知能)をはじめとした高度な技術と知識を持った優秀なIT人材を獲得しようとした場合、条件面で首都圏をはじめとした大都市圏の企業に競り負けてしまうという現実があります。
同社はそうした不利な条件を克服するため、ベトナムで優秀な人材の獲得および育成を図ろうとしているわけです。つまり、優秀なITエンジニアを確保するには、もはや地方の地場企業であっても海外に活路を見出す時代になっていることを示唆している点で興味深いニュースと言えるでしょう。その点、ベトナムのエンジニアの平均給与水準は、日本と比べてもまだ低く、国際的にも競争力を持っていることは間違いありません。実際、ベトナムのIT市場動向をまとめた『VIETNAM IT MARKET REPORT 2020』によると、ITエンジニアの給与水準は役職や得意分野によって異なるものの、採用市場においては足元では以下のような相場で推移しているようです。
オフショア開発会社のリソースをうまく活用する手も
とはいえ、ベトナムで自社拠点をゼロから設立して優秀なエンジニアを確保するのは手続きや投資コストの面などでハードルが高いのも事実であり、システム開発、さらにはその先のDXで課題を抱えている企業のすべてに適用できるアプローチではありません。このため、弊社SHIFT ASIAをはじめ、ベトナムで多数エンジニアを抱えるオフショア開発会社をうまく使い分けながら、テストや開発を進めていく方法も有効な選択肢のひとつです。
実際にどのように開発を進めていくのかについては大きく分けて2パターンが存在します。ひとつは、仕様書をもとにオフショア開発会社が決められた期間までに所定の成果物を完成させる「受託開発型」、もう一つはオフショア開発会社に在籍するエンジニアの中から、指定のメンバーを「専属チーム」として組成し、各メンバーのスキルや経験に応じて決められた人月単価(月額料金)が発生する「ラボ型」です。
こうした契約形態における違いやメリット、デメリットについては既に多くの情報がさまざまなWeb上で紹介されていますので、ここでは詳しい説明は省きます。ただ、いずれの場合においてもオフショア開発会社と組んで海外で開発を進める場合、仕様書などの要件定義はもちろんこと、異なる言語や文化に起因するコミュニケーションギャップが生じるのは避けて通れない課題と言えます。このため、自社のパートナーとして適切な開発会社を選定する上では、それらのコミュニケーションギャップをいかに埋めながら、プロジェクトを推進していくことができるかどうかを見極める視点が欠かせません。
高い日本語能力でコミュニケーションの不安を解消
こうしたお客様の不安に応えるための施策のひとつとして、SHIFT ASIAでは日本語能力が高いベトナム人エンジニアがテストや開発に従事している点が大きな特徴です。例えば、日本語能力試験の資格でいえば、最高レベルのN1、または大学入学レベルに相当するN2以上を保有する社員がベトナム人社員全体の半数以上を占めているほか、日本語とベトナム語で社内向けに通訳や翻訳をする「コミュニケーター」とような語学専門スタッフが存在しません。このため、例えばテスト部門であれば、担当のベトナム人エンジニアが日本語の設計書を読みこなし、日本語でシステムをテストし、日本語でお客様に結果や課題を報告、提案できるという体制を構築しています。
このようにSHIFT ASIAでは日本語能力の高いベトナム人エンジニアがテストや開発に従事する体制を基本としています。加えて、日本のお客様とテスト・開発の現場をつなぐ役目を果たす日本人ブリッジSEも多数在籍しており、日本人とベトナム人のエンジニアが協力しながらプロジェクトを管理、運営することでコミュニケーションを円滑にし、高い品質を実現できる体制を構築しています。
なお、SHIFT ASIAのソリューションや導入事例についてはトップメニューのタブメニューから詳細をご覧いただけますので、何かございましたらいつでもお気軽にご相談いただけると幸いです。
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