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オフショア開発でベトナムが選ばれる3つの理由|『オフショア開発白書』が示す強みとは オフショア開発

更新日:2024/01/16 SAブログ編集部

オフショア開発でベトナムが選ばれる3つの理由|『オフショア開発白書』が示す強みとは

はじめに

日本国内にとどまらず、先進国を中心に世界的にITエンジニア不足が叫ばれる中、システム開発の現場では外国人エンジニアを活用したグローバルな開発体制の構築がますます広がっています。かつては賃金の低い外国へのアウトソーシングという目的で始まったオフショア開発を取り巻く状況は過去10年あまりで大きく変化し、従来の下請け先のイメージが薄れる一方、日本ではできない先進的な取り組みを推進するための実験的な拠点として位置づけられることも増えてきました。

東南アジアを中心とするオフショア開発国のなかでも、ベトナムは過去数年間にわたってオフショア開発の委託先として注目度ナンバーワンの国にランクインしています。

オフショア開発検討先国別割合

2023年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向

 

そこで今回は日本最大級のオフショア開発のためのマッチングサイト、オフショア開発.comから公開されている『オフショア開発白書』(以下、同白書)が注目するベトナムの特徴や強みを紹介しながら、オフショア開発でベトナムが選ばれる3つの理由をお伝えしていきたいと思います。

ベトナムをはじめ、新興国の優秀で割安なITエンジニアを活用したグローバルな開発体制を構築するためには、技術力やコストのほか、地政学的リスクなどの諸要因を考慮する必要がありますが、本記事ではどうしてベトナムがシステムやアプリの開発で課題を抱える日本のお客様から選ばれ続けているのかを解説します。

理由その1:二極化するオフショア開発の”いいとこ取り”が可能

2000年代以降に中国やインドをはじめとする新興国が台頭する中、海外でソフトウェアやシステムの開発を手掛ける取り組み、いわゆるオフショア開発に乗り出す企業が日本でも広がってきました。当時の黎明期においては、日本と近隣諸国との賃金格差を背景にした開発コスト削減がオフショア開発の主な目的でした。ただ、その後の10数年を経て中国やインドなどの新興国が経済的に大きく成長する中、オフショア開発をめぐる環境は大きく様変わりしつつあります。

実際、日本では高齢化や人口減少に伴い、ここ10年余りは若くて手を動かせるITエンジニアの不足が叫ばれており、優秀なエンジニアを採用することは年々難しくなっています。こうした課題に対応するための有力な選択肢として、近年は一定の技術力を持つエンジニアを確保する目的で外国人エンジニアの活用が進んでいます。日本国内に中国やインド、ベトナム人などから優秀なエンジニアを直接招いて製品開発を推進する取り組みもありますが、予算や規模などの制約により、弊社SHIFT ASIAのようなオフショア開発ベンダーと呼ばれる海外のオフショア開発会社と手を組むアプローチが選ばれることも増えてきています。

この場合、開発コストを削減したいという狙いに加え、自社だけでは確保が難しい技術力の高いエンジニアを使って製品を開発できるというメリットが大きな理由になっています。

「オフショア1.0」から「オフショア2.0」へ

つまり、仮に開発コスト削減を目的としたオフショア開発を「オフショア開発1.0」と呼ぶことにするとしましょう。その場合、コスト削減が主な目的ですから、製造業と同様に開発委託先の賃金が上昇すれば、より賃金の安い国に開発拠点がシフトするという動きが起こります。実際、かつては低廉な人件費と日本語人材の厚さを武器に日本の主要なオフショア開発拠点だった中国は近年の高い経済成長の恩恵を受け、ITエンジニアの賃金も右肩上がりで上昇したため、黎明期のようなコストメリットを享受することはもはや難しくなっています。

このため、2010年代ごろから製造業の工場移転と同様に、システム開発の領域でも中国から東南アジア諸国を中心とした近隣他国へ拠点をシフトする動きが強まってきました。ベトナムやフィリピンなどが代表例ですが、とにかくコストが優先される「オフショア1.0」のプロジェクトでは、近年はベトナムやフィリピンよりも賃金水準の低いミャンマーやカンボジア、バングラデシュなどに拠点を開発するケースも増えてきています。

一方、コスト削減よりも開発リソース(IT人材)の確保を目的としたオフショア開発を「オフショア開発2.0」と呼んだ場合、重視されるのはコスト削減効果よりも開発要員、そして彼らの技術力となります。既に中国とインドはオフショア開発における2大受託国として「オフショア1.0」に関連したさまざまなプロジェクトで豊富な実績を積む過程で、ITエンジニアの技術力をグローバル水準まで高めることに成功した結果、「オフショア開発1.0」ではなく、「オフショア開発2.0」で求められる高い技術力と実績を提供できる国として位置づけられるようになっています。

また、技術力という観点で言えば、地理的遠さから従来あまり接点のなかった東欧諸国(ポートランド、ルーマニア、ウクライナなど)に開発を発注するケースが近年は増えていますが、コストメリットの点では東南アジア諸国に軍配が上がる点を考慮すると、「オフショア開発2.0」のアプローチとして捉えることができるでしょう。

このようにオフショア開発をめぐっては足元で企業側のニーズが二極化してきており、同白書も次のようにまとめています。

そうしたトレンドの中、オフショア先の国は人件費の安さを強みとする国(=コスト削減ニーズに応える国)と、高い技術力や最適なITリソースの提供を強みとする国(=リソース確保ニーズに応える国)とで二極化が進んでいます。

オフショア開発に対して異なるニーズが存在する現状を踏まえつつ、人件費と実績をもとに主要なオフショア開発受託国をおおまかにマッピングしたのが以下の図版です。これを見ると、同じ東南アジア諸国の中でも大きな違いがあることがわかります。では、その中でもどうしてベトナムが最も選ばれる国になっているのかについて解説していきましょう。

Offshore_country
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主要なオフショア開発受託国の分布マップ(SHIFT ASIA作成)

拡大画像はこちら

人件費の割安さと実績の多さを併せ持つベトナムの優位性

結論を先に言えば、ベトナムは「オフショア開発1.0」、あるいは「オフショア開発2.0」のどちらにも柔軟に対応できるバランスの良さを持った国です。つまり、自社にとって最適な開発パートナーを見つけ、うまくコラボレーションできる体制を築くことができれば、コスト削減と人材リソース確保を両立することも可能と言えます。

ベトナムオフショア開発において期待できるコスト削減効果としては、ベトナムのITエンジニアの人月単価は日本と比較しておおよそ1/2~1/3程度となることから、ブリッジSEなどの費用を含めても日本の2/3~1/2程度に抑えることが可能となります。
※案件の規模にもよってコスト削減効果は変わり、中規模~大規模の案件でより顕著なコスト削減が期待できます

また、同じようなポジションにいるフィリピンと比べた場合の優位性は、圧倒的な日本語人材の豊富さです。詳細については以下の関連記事をご覧いただけると幸いですが、多くの日本企業にとってベトナムはオフショア開発の良さを活かしながら、コストメリットに加え、技術力や日本語能力の高いITエンジニアを最も確保しやすい国であるのは間違いありません。その意味で、オフショア開発の”いいとこ取り”ができる主要な開発拠点国として注目されていることが、ベトナムが選ばれる1つ目の理由と言えるでしょう。

関連記事:品質の観点から見たベトナム人エンジニアの強みとは?

地政学的リスクや国内政治の安定度の高さもベトナムの強み

このほか、前述したように東欧地域を中心に英語を話す技術力の高いエンジニアを活用した「オフショア開発2.0」の取り組みも近年大きな進展が見られたものの、2022年に入って地政学的リスクが顕在化しました。ご存じのとおり2022年2月以降、東欧の主要な開発拠点のひとつと知られていたウクライナにロシアが軍事侵攻した結果、事業の継続性が危ぶまれる事態が生じています。

実際、ウクライナでシステム開発を手掛ける企業の中には事業を縮小したり、開発者を国外などに避難させたりしながら、開発を継続しているケースがあると報じられています。このほか、東南アジアでもベトナムやフィリピンなどよりも後発で平均賃金がより低いミャンマーでは2021年に国軍によるクーデターが発生し、民主化の動きが武力弾圧で妨げられるなど、政治情勢が不安定したことも記憶に新しいところです。

一方、ベトナムはこうした地政学リスクや政変リスクが比較的低い国として知られています。かつては泥沼のベトナム戦争などを経験しましたが、1980年後半からドイモイと呼ばれる経済自由化政策を通じて経済成長を軌道に乗せながら、外交面では隣国の中国やかつての敵国である米国などとも全方位外交を展開しています。また、内政面では1975年の南北ベトナム統一以降はベトナム共産党による一党独裁体制が長く続いており、民主化という点では課題が残るものの、政治システム自体は非常に安定しているため、ミャンマーなどのような政変リスクは低いと言われています。

このように事業拠点として捉えた場合、ベトナムは地政学的リスクや政変リスクが他の新興国と比べて低いという強みがあると言えるでしょう。

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理由その2:基幹システムからAI開発まで幅広いニーズへの対応力

次に、オフショア開発における上位受託案件の比率(以下参照)を比較すると、ベトナムの特長が浮き彫りになります。

基幹系システムが受託全体の17%

同白書がベトナムにおける受託案件を分類し、オフショア開発全体のデータと比較したところ、ベトナムは「基幹系システム」が全体の17%と、全体の4%と比べて際立って高い結果となっています。ミッションクリティカルな基幹系システムに対しては通常のサービスよりも厳しい要件が求められますが、近年はベトナムに開発を依頼するケースが増えている現状を踏まえると、基幹系システムにも対応できるITエンジニアが育ってきており、技術力の底上げがみられます。

特にSAPに代表される基幹系システムに紐づいたERPの開発、導入支援の分野でも海外のITエンジニアを活用するケースは増えており、ベトナムでもそうしたERP関連の開発やテスト、導入支援などを提供する開発会社が育ってきていることも背景に挙げられます。

AI開発も1割を占め、先端テクノロジーでも実績

さらに、先端テクノロジーへのニーズにも対応しているのがベトナムです。同白書がまとめたデータによると、ベトナムでAI(Artificial Intelligence、人工知能)開発を手掛けるケースも全体の10%を占めており、ベトナムのAIエンジニアを活用して製品開発を進める動きが強まっていることが示されています。オフショア開発全体におけるAI開発の比率が4%にとどまっている点を踏まえると、ベトナムは高まるAI開発に対するニーズの受け皿として、先端テクノロジーの領域でも実績を積み上げていると言えます。同白書もこうしたAI関連の動きについて以下のように指摘しています。

・人材の流動が激しいベトナムでは、優秀な人材確保が開発企業の課題です。優秀な若手の人材は、先端テクノロジーの実績やスキルを身に着けたくて仕方がない状況ですので、人材を囲い込む意味でもAIをはじめとする先端テクノロジーへの取り組みが活発化しています。

・データサイエンティスト/機械学習エンジニアのコンペである「Kaggle」でも、多くのベトナム人エンジニアが参加し、優秀な成績を収めているようです。

・先端テクノロジーの分野でのベトナム躍進は、日本国内でも多くの人の知るところとなってきています。国内からAI開発がより発注されるようになってくると、よりベトナムの注目度が増してくるかもしれません。

オフショア開発における上位受託案件の比較については、詳しくは以下の表をご覧いただければと思いますが、基幹系システムからAI開発まで幅広いニーズに対応できる総合力の高さこそがベトナムがオフショア開発委託先として選ばれている2つ目の理由に挙げられます。

オフショア開発における上位受託案件の比率

ベトナム

Webシステム開発(業務系):24%

Webシステム開発(サービス系):23%

スマホアプリ開発:18%

基幹系システム開発:17%

AI開発:10%

IoT開発:4%

Webサイト制作:4%

全体

Webシステム開発(サービス系):27%

スマホアプリ開発:27%

Webシステム開発(業務系):16%

Webサイト制作:13%

AI開発:4%

IoT開発:4%

基幹系システム開発:4%

FinTech(フィンテック)事業の中核拠点を目指す動きも

実際、コロナ禍の中でもIT・テクノロジー分野ではベトナムは引き続き海外からの投資の受け皿となっており、日系企業が自社のシステム開発拠点をベトナムに設立するケースが加速しています。

例えば、楽天カードは2021年10月にFinTech(フィンテック)事業におけるシステム開発を手掛ける子会社、RAKUTEN FINTECH VIETNAM CO., LTDをベトナム・ホーチミン市に設立したことを発表しています。

<参照>楽天カード ニュースリリース:楽天カード、ベトナムにシステム開発子会社を設立

同社はニュースリリースでベトナムに進出した理由を次のように述べています。

ベトナムでは、政府がIT人材育成支援策を積極的に導入しており、将来にわたり優秀なIT人材の確保や活躍が見込めるほか、日本との時差が少ないため日本国内の状況に応じたスピード感のある事業運営も期待できます。新会社では、現地でITエンジニアを採用し、まずは当社における社内向けシステム等の開発を行います。将来的にはお客様向けサービスを含め、フィンテック事業における海外でのシステム開発の中核的な拠点となることを目指します。

上記ニュースリリースより抜粋

 

このように現在ではFinTechなどの先端技術についても、ベトナム人エンジニアを活用しながら開発を進めていく取り組みが広がっています。楽天カードは上記のとおり、将来的にはベトナムをFinTech事業における海外でのシステム開発の中核拠点にする計画を明らかにしていますが、これは日本と比べ、ベトナムが先端技術にも精通したエンジニアを中長期にわたって安定的に確保できる国として見込まれていることも背景に挙げられるでしょう。

理由その3:品質管理・プロジェクト管理に強み

最後の3つ目が、品質管理・プロジェクト管理における実績と経験に基づいたノウハウが蓄積されている強みです。同白書がオフショア開発企業100社にアンケートを実施したところ、ベトナムのオフショア開発企業は「日本人対応」や「技術力」といった他の項目以上に「品質管理・プロジェクト管理」を強みに挙げるケースが最も多かったことが分かりました。

実績とノウハウの蓄積が自信に

同白書は「開発実績が蓄積し、プロジェクトの成功経験を経たことで、開発企業側の自信にもつながっているのでしょう」と分析していますが、日系開発企業や日本に留学経験のあるベトナム人起業家が設立したベトナム系開発企業などが幅広い開発支援サービスを提供しているベトナムでは、日本の顧客向けにさまざまなプロジェクトを支援する過程で数多くの実績とノウハウを積んできたITエンジニアが豊富に存在します。

オフショア開発を成功に導くためには、技術力やコスト管理のほかにも、顧客と開発会社間のコミュニケーションギャップの解決など、オフショア開発に絡むさまざまな課題を熟知し、柔軟に対応できるソフトスキルが重要になってきます。ベトナムは近年オフショア開発の主要な受け入れ先として大きく成長を続ける過程で、こうしたソフトスキルの高いエンジニアが育つ一方、彼らを抱える開発会社にもさまざまなノウハウが蓄積されてきました。

価格競争力から品質にシフト

また、オフショア開発国としては後発のミャンマーやバングラデシュなどの新興国がコストを優先した「オフショア開発1.0」に対するニーズを吸収しながら成長する中、ベトナムの開発会社の多くが自らの優位性を価格競争力ではなく、品質の高さに求める傾向が強まっていると同白書は指摘しています。

実際、弊社もその例に漏れません。SHIFT ASIAは2016年にベトナムに進出した当初から他社とは異なるアプローチの下、日本で培った品質保証に関するさまざまな知見やスキル、仕組みを根付かせながら、品質を武器にお客様の技術的課題の解決に貢献できるよう品質向上に取り組んできました。

SHIFT ASIAはソフトウェアのテストおよび品質保証をベースにお客様の開発における無駄の改善に貢献してきた歴史を持つ企業として、お客様にしっかりとした品質を届けていくというミッションを持っています。つまり、「SHIFT ASIAが関わることで安心して品質の高いものができる」というのがお客様に対するSHIFT ASIAの提供価値になっており、これはオフショア開発がこの先どのように進化したとしても、決して変わることのない価値であり続けます。

ベトナムが選ばれる3つ目の理由は、こうした品質管理・プロジェクト管理における強みであると言えるのです。

導入事例

SHIFT ASIAのオフショア開発・ソフトウェアテストなどの導入事例はこちらから

導入事例

おわりに

今回は『オフショア開発白書』をもとにオフショア開発でベトナムが選ばれる3つの理由についてご紹介しました。

私たちSHIFT ASIAは、ソフトウェア品質保証・第三者検証のリーディングカンパニーである 株式会社SHIFT(プライム市場上場)の海外戦略拠点として、2016年の創立以来ベトナム・ホーチミンにてソフトウェアテスト事業を手掛けながら、近年はソフトウェア開発にも事業領域を拡大させてきました。

長年に渡り培ってきた品質保証のナレッジとハイレベルなエンジニアの技術力を背景とした、高品質かつスピーディな開発をその特長としています。

オフショア開発やソフトウェアの品質面などでお悩みや課題を抱えられている方は、ぜひ一度SHIFT ASIAにご相談ください。

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