ジェトロ、ASEANにおけるDX促進事業にベトナムの2事例を採択

ジェトロ、ASEANにおけるDX促進事業にベトナムの2事例を採択

以前の記事で日系企業がベトナム国内に開発拠点を設け、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動きをご紹介しましたが、このほど日本貿易振興機構(ジェトロ)が採択した「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」にベトナムから2事業が選ばれました。いずれも日本企業が有する技術・ノウハウなどの強みを活かしながら、ベトナム国内で実証実験を行うことでイノベーションの創出を狙う試みとして注目されます。

モビリティと医療の2分野で実証実験

ジェトロDX推進事業事務局の発表によると、今回ベトナムから選ばれたのは以下の2社の取り組みです。

1. WILLER株式会社 事業概要:ベトナム社会主義共和国ハノイ市におけるルート型AIオンデマンドシェアバス実証事業(交通・モビリティ)
2. カーブジェン株式会社 事業概要:ベトナムにおける細菌感染症領域のDX推進を目的としたオンラインでの原因菌鑑別支援プラットフォームの構築(医療介護)

このうち、WILLERについてはベトナムのテクノロジー企業と連携し、ハノイ市内でAIを活用したオンデマンドバスサービスの実証実験を行う計画です。都市圏の公共交通機関がバスなどに限られるベトナムでは、就学児童の多くは両親が運転するバイクで学校に通っています。このため、共働き世代が大半を占めるベトナムでは朝夕1日2回の子供の送迎は、家庭における大きな負担になっています。

こうした社会課題を解決するため、同社はAIを活用したルーティング技術と利用データの分析を通じ、最適なバスの運行ルートを割り出し、正確な乗降予定時間をアプリで利用者に連絡するシステムの開発を目指しています。また、日本のバス運行事業で培った安全管理、サービス品質管理を組み合わせることで、子どもだけでも安心してバスを利用し、通学できる仕組みを構築したいとしています。

一方のカーブジェンはベトナムの病院と提携し、光学顕微鏡で撮影したグラム染色画像、検体・症状などをデータを取り込み、医師が遠隔地にいても診断・治療できるようにする医療支援プラットフォームを構築する計画です。ベトナムでは感染症の専門医不足や医師の偏在などが医療課題となっており、これらを背景に適切な診断ができないことも少なくありません。このため、医療現場では抗菌薬の不適正投与が頻発しており、結果的に抗生物質に耐性を持つ薬剤耐性菌(AMR)による感染症が問題になっています。

ベトナムから他国への事業展開も視野に

取り組み領域は公共交通システム、医療とそれぞれ異なるものの、2社に共通するのが日本で培った自社の技術やノウハウをベトナムで実証し、将来的には同じような課題を抱える他の新興国への事業展開も視野に入れている点です。

実際、ベトナム政府は2020年6月、「2025年までの国家DXプログラムと2030年までの方向性」を発表し、2030年までにデジタル国家になることを目指しています(参照記事)。政府高官は具体的には同年までに10万社のデジタル企業および150万人のデジタル人材を育成する目標を明らかにしており、国レベルでデジタル技術を活用してイノベーションの創出や社会変革を推進する取り組みを加速させています。

このほか、ベトナムはアジアの周辺国と比べても優秀で人件費の安いエンジニアが多く、デジタル技術を活用した実証実験(PoC)を始めるには適した地域とも言えます。半面、ベトナムを市場として捉えた場合、高額かつ高付加価値なサービスを必要とする大企業がまだまだ少ないため、BtoB向けのビジネスツールを開発する企業の中にはベトナムに開発部門を置きつつ、営業部門の拠点に関しては東南アジア全域を視野にシンガポールなどに置くケースもみられます。

このように、東南アジアでのビジネス展開を視野に入れた場合、PoCの拠点としてベトナムの人材や技術力をうまく活用しながら製品を開発し、日本や他の先進国で販売していくという流れは今後も加速していく可能性があると言えるでしょう。