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スクラムの3つの作成物|プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメントについて アジャイル開発

更新日:2024/02/26 SAブログ編集部

スクラムの3つの作成物|プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメントについて

前回の記事「スクラムイベントとは|スクラムにおけるスプリントと4つのイベント」では、スクラムでは「どういったタイミングで・誰が・何をするのか」といった運用面にフォーカスをして、スクラムのイベントについてご紹介しました。

今回は最後のトピックとして、これまでと同様にスクラムガイドを参照しながら、「スクラムにおける3つの作成物」についてご紹介します。
スクラムにおいて「実際に何が作成されるのか」を明らかにし、「プロダクトバックログ」や「スプリントバックログ」、「インクリメント」といったスクラム特有の用語や考え方についての理解を深める上で、こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

<スクラム連載記事一覧>
1. スクラムとは|スクラムの定義や特徴、体制とチーム内の役割
2. スクラムイベントとは|スクラムにおけるスプリントと4つのイベント
3. スクラムの3つの作成物|プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメントについて

スクラムにおける3つの作成物

スクラムにおける作成物とは、スクラムにおいて行う作業や目的、スクラムによって作り出される価値のことを表しています。
少しわかりにくいかもしれませんが、作成物はプロダクトやスプリントにおける「ゴール」と「ゴールを達成するために必要なものや作業」、「作業を通じて生み出される成果(価値)」と「その完成の定義」がセットになって構成されているということです。

具体的には、スクラムにおける3つの作成物として、以下の作成物が定義されています。
・プロダクトバックログ
・スプリントバックログ
・インクリメント

またこれらの作成物には、「確約(コミットメント)」と呼ばれる、各作成物の目的や満たすべき状態が含まれます。
これらの作成物は、スクラムチームが目指す目標と、目標に対する進捗や目標に対して正しい方向に進んでいるのか、それとも修正が必要なのかを明らかにするよう、スクラムにおいて重要な「透明性」が最大化されるように設計されたものです。
目指すものや状態を明らかにすることで、透明性とチームの集中が高まり、また実態とのギャップを通じて進捗を把握することが可能となります。

各作成物ついて、確約(コミットメント)と合わせて詳しくみていきましょう。

プロダクトバックログ

プロダクトバックログとは、プロダクトが目指す将来の状態と、それを実現するために必要なものの一覧です。
それぞれスクラムの用語を用いて言い換えれば、プロダクトバックログは「プロダクトゴール」と「プロダクトバックログアイテム」の2つから構成されます。

プロダクトゴール:プロダクトバックログにおける確約(コミットメント)

プロダクトゴールとは、価値を提供する手段であるプロダクトが目指す将来の状態であり、スクラムチームの長期的な目標です。
プロダクトについては「サービスや物理的な製品である場合もあれば、より抽象的なものの場合もある」とされていることから、そのゴールは場合によって異なるものの、一例としては「ユーザーがこのプロダクトを使って○○をできるようになること」といった形で設定されます。

そもそもスクラムチームとはプロダクトゴールを達成するために専門家が集まった単位であることから、プロダクトゴールはスクラムチームの存在意義であり、最上位の目標とも言えます。
スクラムチームが集中して自律的に活動するためには、プロダクトゴールが明確に設定され、スクラムチームの目標が明らかになっていることが極めて重要です。

プロダクトバックログアイテム

前回の記事「スクラムイベントとは」でも少し触れましたが、プロダクトバックログアイテムとはプロダクトゴールを達成するための「何か(what)」を定義するものであり、プロダクトゴールの実現に必要なものの一覧です。
この一覧は顧客やステークホルダーのニーズ、ビジネスの環境やチームの状況など、さまざまな複合的な要因に応じてプロダクトオーナーによって作成され、優先順位が割り振られます。
プロダクトバックログアイテムは要求の変化に応じて適応し、内容や優先順位について常に更新され続けることでその時々において最適な状態であることが求められます。

またプロダクトバックログアイテムの粒度が大きい場合や、十分に詳細になっておらずそのままでは具体的な作業に落とし込むことが難しい場合など、必要に応じてスクラムチームによる「リファインメント」と呼ばれる活動を通じたアイテムの更新が行われることもあります。
リファインメントはプロダクトバックログアイテムをより詳細化し、内容や工数・コスト、優先度をより明確にすることで透明性を高める継続的な活動です。
スクラムにおける最初のイベントであるスプリントプランニングの中で、そのスプリントで対応するプロダクトバックログアイテムを選択しますが、その際にリファインメントを行うことがあります。

スプリントバックログ

こちらも前回の記事で少し触れましたが、スプリントバックログとは成果物を作成するための具体的な作業計画(how)であり、開発者によって開発者のために計画されます。
またスプリングバックログにはそのスプリントの目的である「スプリントゴール」(why)と、そのスプリントで対応する「プロダクトバックログアイテム」(what)が含まれます。

スプリングバックログはプロダクトバックログと同様に、ゴールとそれを達成するために必要なものがセットになっていますが、開発者が行う作業に対する進捗を検査できる粒度での計画が含まれることから、より詳細なものと言えます。
スプリントバックログはスプリントプランニングにおいて作成され、チームの学習や日々の進捗、状況の変化などを通じて更新されていきます。

スプリントゴール:スプリントバックログにおける確約(コミットメント)

スプリントゴールとは開発者が確約するスプリントの唯一の目的であり、そのスプリントがどのような価値を生み出すのか・なぜ存在するのかを明らかにするものです。
スプリントで行われるあらゆる作業はスプリントゴールの達成にフォーカスして計画され、開発者が作業をする際にも常にスプリントゴールを念頭に置くべきとされています。

スプリントで達成することはゴールとして明確に設定される一方で、その達成手段である作業の計画については開発者の手にゆだねられ、作業に対する自由度や柔軟性がもたらされます。
これは、スクラムチームが自己管理型チームであるということにも関連します。

インクリメント

インクリメントとは、プロダクトゴールを達成するために作成され、完成の定義を満たした具体的な成果物です。
アイデアであるプロダクトバックログアイテムを、価値に変えたものと言い換えることもできます。

新しいインクリメントは過去に作成されたインクリメントに追加される形で一つ一つ積みあがっていき、最終的にプロダクトゴールを満たすプロダクトが完成します。
インクリメントはすべてのインクリメントが組み合わさって正しく機能し利用可能である必要があり、リリース可能であるという条件を満たす必要があります。

1回のスプリントで複数のインクリメントを作成することも可能であり、インクリメントをまとめたものがスクラムの最後から二番目に実施されるスプリントレビューにて提示され、レビューされます。

完成の定義:インクリメントにおける確約(コミットメント)

完成の定義はスクラムガイドにおいて以下のように定義されています。

完成の定義とは、プロダクトの品質基準を満たすインクリメントの状態を示した正式な記述である。

つまり、「○○という基準を満たしたら完成とする」といった内容が記述された定義のことです。
完成の定義は通常組織やチーム、プロダクトによって異なり、ある場合ではテストの実施結果で一定以上の品質基準をクリアすることであったり、デモを通じた顧客からの一定以上の評価であったり、特定のステークホルダーの承認であったり、行政からの許可であったりとさまざまなケースがあります。
また「正式な記述」とされていることから、完成の定義は関係者間で正式に合意され共通認識となっている必要があります。

開発者の作業を通じてプロダクトバックログアイテムが完成の定義を満たすことではじめて、それがインクリメントになります。
もし完成の定義を満たしていない場合はインクリメントとして認められず、リリースされることもスプリントレビューで提示されることもなく、スプリントバックログに戻されます。

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さいごに

ここまで全3回にわたって、スクラムの概要から体制やチーム内での役割、スクラムにおけるイベント、作成物について一通りご紹介をしてきました。
スクラムとは、初めにご紹介した通り1つの「軽量級フレームワーク」であり、詳細な指示ではなく最低限の枠組みのみを提供するものです。
これは、スクラムにおいては明確に従うべきルールが規定されている一方で、その具体的なやり方はスクラムチームに任されているということを意味します。

やってはいけないこと、やらなければならないこと、満たさなければいけない条件、大切にすべき価値観といった枠組みを与える一方で、「では実際にどのように作業をすればよいのか?」「具体的にどのように動けば良いのか?」「このようなシチュエーションでは何をどうすればよいのか?」といった具体的なことは、各チームメンバーが自分の頭で考え、学習し、経験を積みながら自身とチームで答えを出していく必要があります。
この特徴によりスクラムはある種の普遍性を獲得し、あらゆる組織や領域で活用され得る可能性を持ち、特に複雑かつ変化が早い課題に対して有効なフレームワークとなるのです。

スクラムが発表された1990年代初頭から既に30年近くの年月が経っていますが、スクラムは色あせるどころか、むしろその影響力はますます拡大しています。
実際、スクラムガイド自体も2010年の最初のリリースからその時々の状況に合わせて、今でも更新され続けており、このことは、スクラムにおける「適応」をスクラムガイド自体も体現していると言えるでしょう。
スクラムの枠組みは、今後も長期的かつ継続的にブラッシュアップされ、時代に合わせてその形を適切に変え続けていくことで、その重要性はこれからもますます高まっていくのではないでしょうか。

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