アジャイル開発事例:リモート環境下でチームで良い関係性を構築するには?

アジャイル開発事例:リモート環境下でチームで良い関係性を構築するには?

こんにちは、SHIFT ASIAマーケティングのNORYです。
今回は当社の開発チームが取り組んだアジャイルなチームづくりについてご紹介します。当社のあるベトナム・ホーチミン市でも5月末から新型コロナウイルスの市中感染が拡大したことを受け、全社でリモートワークへの切り替えが一気に進みました。ただ、開発メンバー同士が自宅などの離れた場所にいる場合、アジャイル・スクラム開発で必要不可欠となっている対面コミュニケーションが物理的に難しいという現実があります。

そうしたリモートワーク環境下でスタートした開発期間1カ月という短期プロジェクトを成功に導いた日本人スクラムマスターがCASEYです。限られた開発期間の中、どのようにしてメンバーとのコミュニケーションを活性化させ、より良いチームをつくることができたのか、などについて彼に話を聞きました。

プロジェクト責任者を務めたCASEY

――まずプロジェクトの概要を教えてください。

日本のお客様向けに新たに設計されたスマートフォンのアプリのプロトタイプを開発する案件でした。私がプロジェクトリーダーとして、ベトナム人のUI/UXデザイナーを含むベトナム人開発チーム6名を取りまとめることになったのですが、プロジェクトの開始前の段階でいくつか課題がありました。

まず、実は私が入社して初めてアサインされた案件だったんですね。このため、同じ社員同士であっても、開発チーム全員とほぼ面識がないという状態でした。次に、納期が1カ月という短期間の条件だったため、お客様からいただいた日本語の仕様書をベースに作業をしていたら間に合わないのは明らかでした。また、SHIFT ASIAには日本語が話せるベトナム人社員が多いのですが、チームには英語のみ可能なメンバーも含まれていたので、そもそもドキュメント作成に多くの工数を割くのは非効率でした。

そのような状況の中で、チーム内のコミュニケーションから進行管理、アプリの動作確認などを円滑に進めるにはどうしたらよいかと悩んでいた時、私がアプリの動作をその場で確認し、各メンバーに適切な指示を出せれば一番効率がよいだろうと考えました。そのために勤務中は朝から晩までMicrosoft Teamsのビデオ会議を私だけつないでおき、自宅にいながらいつでもカメラとマイクでコミュニケーションが取れる状況を作り出しました。

アジャイル開発ではチーム内のコミュニケーションが最も重視されます。そのための工夫としてビデオカメラを常時オンにすることで、言わばオンライン上に「私の座席」を作り、気軽に相談してもらえる環境を整えました。また、実際の開発ツールとしてはUI/UXを考慮したプロトタイプ作成に適したデザインツールのAdobe XDを活用し、作成したアプリの各画面のイメージに動作を定義させ、効率よくプロトタイプの開発を進めました。

――現場のリーダーとして特に意識したことは何でしょうか。

そもそも私と関わるのが初めてというメンバーが大半だったし、始めはプロジェクトの概要も十分に理解していない状況だったと思うので、できる限り私が顔を見せるようにすることが大事だと考えました。実際、私の人となりを理解してもらい、チームから信頼を得るためになるべく笑顔をキープし、メンバーを不安にしないようなコミュニケーションを心がけました。

開発現場では「このボタンがタップされた後の動作はどうなるのだろう」、「この作業でちゃんと合っているか」など、目の前のタスクを処理する過程で、どうしてもわからないことがいろいろ出てきます。そんな時に各自の判断で作業を進めてしまうと後になって不具合が生じることも少なくないので、何かあればすぐに相談できる状況をチーム内に作り出すことはとても大切です。

実際、テキストではなく、声で会話することによってタスクに対するメンバーの理解度などをより正確に把握することができたと思います。例えば、メンバーの説明がどことなく自信がない口調であれば、「誰かに助けを求めているのかもしれない」と察することができますし、こちらから「これ、わかりますか?」と尋ねて、返事に詰まってしまうようであれば、タスクの進め方を理解してない可能性が高いと判断できます。

そのほか、気を付けたこととしては、リモートワーク中は対面でのコミュニケーションがどうしても減ってしまうので、人間らしい温かみのあるコミュニケーションをなるべく多く取り入れるようにしたことでしょうか。具体的には、会話の中にTeamsのライブリアクション機能を使って「いいね」や「拍手」、「笑い」などの感情表現を取り入れるようにしました。

例えば、毎朝のミーティング時に私がメンバーに何か指示を出した際、「オッケー、わかったら親指を立ててみて」と彼らにリアクションをお願いします。すると、指示を理解したメンバーから「いいね」が返ってくるという風に、よりライブ感のあるやり取りが可能になります。ふとしたきっかけで取り入れた方法でしたが、応答時の仕草として自然にチームに浸透していきましたね。

Teamsのライブアクションボタンもうまく活用

――チームを運営する際に大事にした方法論などはありますか。

私自身はCertified ScrumMaster(CSM) と呼ばれるスクラムマスターの認定資格を保有しているのですが、SHIFT ASIAのようなオフショア開発企業の現場でもスクラムをはじめとしたアジャイル開発の方法論を実践する余地は大きいと感じています。今回はコロナの影響でリモートワークに切り替えざるを得ないという状況でしたが、顔が見えない状態で仕事を依頼すると、頼んだメンバーの進捗がなかなか見えづらいものです。

今回、プロジェクトをうまく回すために活用した方法論として、エクストリーム・プログラミング(XP)が挙げられます。XPはコミュニケーション、シンプルさ、フィー ドバック、勇気、そしてリスペクト――の5つに価値を置くソフトウェア開発手法ですが、この中の1つとして開発チームはなるべく近くに座って作業をしましょうという考えがあります。ただ、リモートワークではそれが難しいので、常時オンにしたビデオ会議などを活用することで疑似的に“同じシマにいるような環境”を作り出す工夫をしました。

――プロジェクトで得た学びがあれば教えてください。

最終的にスケジュール通りに開発を終え、お客様からも上々の評価をいただくことができたのですが、そこに至るまでには個人的な反省点もあります。プロジェクト開始当初は私自身が各メンバーの特徴をよく理解しておらず、デザインの制作で一番経験のある一部のメンバーばかりにタスクを回した結果、一時的に開発が滞ってしまうことがありました。結局、全員で手分けして遅れを取り戻すことができたものの、リーダーとしてみんなを信用し、適切にタスク管理を行うことの大切さを学びました。

結果的にビデオを常時オンにしてコミュニケーションを密に図ることで、チーム内の相互理解と信頼が深まり、プロジェクトを円滑に進めることができたと感じています。ただ、大事なのはツールそのものの活用ではなく、メンバー一人ひとりの顔を思い浮かべながら、一緒に協力してモノを作っていける関係性を築けるかどうかだと思います。メンバー同士の表情が見えないリモートワーク環境下で高い品質の開発を実現するには、同じオフィスにいる時以上に相手と話し、その人が抱える課題を拾い上げ、チーム全体で共有する姿勢が欠かせません。

最後になりますが、プロジェクト完了後、ベトナム人メンバーからも「急な時でもTeamsのビデオチャットで気軽に聞けたのは良かった」、「質問を直接確認できたので、安心してタスクに取り組めた」という反響を得られたことは、私にとっても自信になりました。

 

自宅にセットした高性能のマイク(左)とWebカメラ(右)も大活躍