品質の観点から見たベトナム人エンジニアの強みとは?

品質の観点から見たベトナム人エンジニアの強みとは?

スマートフォンやSNSの普及などにより、ますます多くの消費者がデジタルを活用としたサービスを当たり前のように求めるようになる中、それらを支えるシステムやアプリの開発ニーズは今後も増えることはあっても減ることはないでしょう。一方、日本では国内の人口減少に伴い、昨今ではエンジニア不足がIT業界全体の課題となっています。つまり、ITシステムやアプリに対する需要に対し、作り手であるエンジニアの絶対数が足りていないという需給ギャップが生じているのです。こうした課題に対応するための有力な選択肢として、外国人エンジニアの活用があります。そこで今回は弊社SHIFT ASIAが拠点を置くベトナムの現状を例に挙げながら、ベトナム人エンジニアの特徴や実態についてご紹介します。

オフショア開発の広がり

はじめに外国人エンジニアの活用という点に関して言えば、既に2000年代ごろからオフショア開発という名称で、日本より人件費の安い海外の開発会社に開発や運用保守などをアウトソーシングする取り組みが加速してきた経緯があります。

オフショア開発とは

オフショア開発(offshore development)とは、主にソフトウェアやWEBシステム、アプリケーションなどの開発業務を海外の企業やリソースを活用して行う委託開発の手法の1つです。
日本においては、主にコストやリソース面でのメリットや、開発環境の変化といった理由などからアジアを中心に活用が進んでいますが、近年ではその活用方法や地域に新たな傾向が見られ始めています。

出典:あらためて、オフショア開発とは|日本においてオフショア活用が進む理由(SHIFT ASIA お役立ちコラム)

ただ、当初は日本のエンジニア人材の不足を代替するためというよりも、中国をはじめとした日本人エンジニアよりも単価の低い外国人エンジニアに業務を発注することにより、開発コストの削減を狙うことが主な目的でした。その後、中国の経済発展に伴い、中国人エンジニアの単価が上昇するにつれて東南アジアや東欧など、より賃金水準の低い国のエンジニアを活用する動きが広がり、今に至っています。そうした流れの中、弊社SHIFT ASIAではベトナムに日本人と同様、またはそれ以上に優秀なエンジニアが多くいることに注目し、2016年に初の海外開発拠点をベトナム・ホーチミン市に開設しました。

そもそもベトナム人の特徴とは?

では、実際にベトナム人にはどのような特徴があるのでしょうか。ベトナム人について一般的によく言われることは、勤勉で真面目な国民性を備えているということです。これは、日本人にも通じる点であるほか、SHIFT ASIAのコア事業のひとつであるソフトウェアの品質保証(QA)を行う上でも欠かせない資質です。

さらに、日本では製造業や農業、サービス業などの現場を数多くのベトナム人技能実習生が支えているという実態が存在します。一部ではその過酷な労働環境や条件が社会問題化しつつある面もありますが、毎日の日常生活の中で立ち寄る飲食店やコンビニエンスストアなどでは、当たり前のようにベトナム人の店員たちが接客を担っている光景を見かけることは珍しくありません。その意味で、ベトナム人エンジニアの実態は知らなくても、ベトナム人の働きぶりを目にしたことのある日本人は少なくないと言えるのではないでしょうか。

このほか、ベトナム人の特徴として最近では日本語のローマ字の頭文字を取った「4K」、「6K」というキーワードが使われるケースもあるようです。今回は6Kについてご紹介します。なお、4Kについては、以下の過去記事もご参照ください。

ベトナム人の国民性「4K」と実際に海外インターン生活4ヶ月を経て感じたこと

・器用

ベトナム人が手先が器用なことは産業界では広く知られており、グローバル企業がサプライチェーンを多元化の一環で中国から近隣の東南アジア諸国に生産拠点のシフトが進む中、ベトナムが選好されています。EY Japanのレポートによると、中国よりも低い生産コストや貿易構造の類似性などが選ばれる理由になっていますが、ベトナム人の器用さが評価され、古くは繊維産業のみならず、最近ではハイテク機器などの高付加価値製品の製造移転が進みました。例えば、サムスン電子はベトナム北部を中心に多額の投資を行い、携帯電話などの高付加価値製品を製造しています。

参照:中国からベトナムへのサプライチェーン移転の背景と日本企業にとってのチャンス(EY Japan)

・向学心旺盛

ベトナムは日本以上に転職が当たり前の社会なので、社会人になってからも自分のスキルアップのために教育投資を惜しまない人が少なくありません。エンジニアであれば、アジャイル開発やAWSに関する技術など、転職に役に立つIT知識や資格を身に付ける人が多いですし、ベトナム資本の地場企業よりも高収入が期待できる外資系企業で活躍するために業務終了後に英語や日本語などの外国語スクールに通うなど、とにかく向学心が旺盛です。2010年代ごろから右肩上がりで高い経済成長が続いてきたベトナムでは「努力してスキルアップすれば、より高い収入が実現できる」という日本の高度経済成長のころのようなモチベーションが若者を中心に広がっているのです。

・交渉上手

ベトナムは歴史的に常に中国をはじめとした大国の脅威に晒されてきました。近代以降はフランスによる植民地化を経て、独立のためにフランスや米国とも戦火を交えた歴史を有する国であることから、外交面ではバランス感覚を重視し、全方位外交を基本方針としています。こうしたお国柄に加え、現在も価格交渉を前提とした生鮮市場が市民の台所として親しまれているので、話し合いによって有利な条件を引き出す文化が根付いています。これは別に買い物に限らず、賃貸住宅に住む人であれば、大家と直接家賃を交渉するのが一般的ですし、会社であれば、毎年の給与交渉は当たり前とも言えるでしょう。

・かかあ天下

ベトナムは同じ中国などの社会主義国と同様、共働きが基本です。また、一般的に男性よりも女性の方が勤勉に働く傾向が高いと言われており、夫婦であれば夫よりも妻の方が給料が高いことも少なくありません。このため、働き者の女性が家計を支えている家族も少なくなく、「かかあ天下」のお国柄とも言えます。また、ベトナムには3月8日の「国際女性の日」に加え、ベトナム独自に10月20日を「ベトナム女性の日」と定め、女性の社会的な活躍を表彰したり、家族や同僚などの身近な女性に感謝を伝える日として認知されており、女性の活躍が幅広く社会に受け入れられているといっても過言ではありません。

実際、男女の平等をテーマに世界経済フォーラム(WEF)が発表した2021年版の「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」(The Global Gender Gap Index=GGGI)によると、ベトナムは世界156カ国中87位と、120位の日本を大きく上回っており、ジェンダーに限れば、日本よりも進んでいると言えるでしょう。弊社SHIFT ASIAでもQA部門を中心に多数の女性社員が活躍しており、全社員に占める女性社員の割合は約4割にも達しています。

参照:21年版WEF世界男女格差指数、ベトナム156か国中87位 日本は120位

・近視眼的

ベトナムは先進国と比べると、インフラや公共交通、社会保障制度などがまだ十分に整備されているとは言えません。また、第二次世界大戦後は長らく戦乱の時代が続いたこともあり、長期的な視野に立った公共投資が遅れた面もあります。一方、南部のメコンデルタが顕著な例ですが、豊かな穀倉地帯を背景に米や果物、魚などの食べ物に困ることはないという安心感から、ベトナム人には「その日暮らしを楽しむ」という風な近視眼的な傾向があると言われています。

このため、目の前の課題に対しては中長期的な計画を立てて根本的な原因を解決するというアプローチよりも、場当たり的な対応で切り抜ける方法が好まれる傾向があるようです。ポジティブに捉えれば、変化に対して柔軟性があるとも言えますが、近視眼的に目先の解決策を選ぶ傾向は、日本人から見た場合、無計画に映ることがあるかもしれません。

・コネ社会

ベトナムでは日本以上に家族を大事にする文化が根付いています。また、農業や自営業者の比率も日本より高いこともあり、会社や所属組織に頼るという意識は比較的薄いと言えるでしょう。このため、いざとなったら頼れる家族や血縁を大切にする傾向が強く、これは長らく戦乱の時代が続いて信用経済の発達が阻害されてきたという歴史的経緯も影響しています。実際、こうした縁故主義は政治や企業における人事面でも広くみられる現象で、仕事の成果以上に有力者との関係の近さを大事にするコネ社会が通用する社会でもあります。

ベトナム人エンジニアの特徴とは?

では、そうしたベトナム人の性格的特徴を踏まえつつ、弊社SHIFT ASIAを例にベトナム人エンジニアの強みについて考えてみましょう。

1.国策としてのIT人材育成

ベトナムはITエンジニアの育成を国策のひとつとしており、2030年にはITエンジニアを含めた150万人のIT人材輩出を目指しています。このため、ベトナム政府はSTEM(科学・技術・工学・数学)教育を重点的に推進しており、ベトナムでは中学校からコーディングやIT科目が導入されています。また、OECDが2015年に各国・地域の科学的リテラシーを実施したPISA調査では、全79カ国・地域のうち、上位8位にランクインした実績があります。

参照:OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント、P15(文部科学省・国立教育政策研究所)

実際、大学でITやテクノロジー系の学問を専攻し、エンジニアとして社会に出る人々は毎年約5万人レベルで増加していると言われており、足元ではエンジニア人口が着実に拡大しつつあります。なお、ベトナムのIT市場動向をまとめた『VIETNAM IT MARKET REPORT 2020』によると、エンジニアの間ではJavascript、Java、PHP、Pythonなどが主要なプログラミング言語として利用されています。このほか、人口約1億人で、平均年齢も31歳と若いため、ベトナム人エンジニアは日々発展する新たなテクノロジーに対するキャッチアップも比較的早い人が多いという特徴があります。

参照:IT Human Resource: The most popular tech stack, VIETNAM IT MARKET REPORT 2020

2.高い日本語能力

上記で触れたようにベトナムではスキルアップのための外国語の習得熱が高まっており、日本語の学習人口も近年、大幅に拡大しています。国際交流基金がまとめた「2018年度 海外日本語教育機関調査報告書」によると、ベトナムにおける日本語学習人口は2018年時点で約17万5,000人と世界6位にランクしていますが、伸び率でみると、前回調査時(2015年)と比べて2.7倍と急増し、他の国・地域を大きく引き離しています。

こうした日本語を話す母数の拡大を受け、日本語能力が高いベトナム人エンジニアの層も次第に厚くなっています。実際、SHIFT ASIAでは日本語能力試験の資格でいえば、最高レベルのN1、または大学入学レベルに相当するN2以上を保有する社員がベトナム人社員全体の半数以上を占めています。もちろん、入社後の日本語研修などで語学力をレベルアップした社員も少なくありませんが、日本語学習人口の層が厚くなっているベトナムでは、日本語ができるエンジニアを採用できる可能性が他国と比べて高いとも言えるのではないでしょうか。

海外における日本語学習人口(2018年)

3.それらを組み合わせた品質の確立

SHIFT ASIAでは、こうしたベトナム人エンジニアの高い技術力と日本語とSHIFTグループが培ってきた品質保証に関する知見や方法論を組み合わることにより、日本のお客様向けに高品質なソフトウェア開発・品質保証(QA)サービスを提供しています。例えば、ソフトウェアテスト業務に関して言えば、手先の器用なベトナム人エンジニアが細かい不具合(バグ)を一つ一つ発見し、コツコツと修正するだけでは決して効率的ではありません。

SHIFT ASIAでは、それらのバグが発生しやすいポイントや条件などを方法論として体系的にまとめ、すべてのエンジニアが学び、活用できる体制を整えています。そして、マニュアルテストだけではなく、お客様の条件や予算に応じてテスト自動化ソリューションなど、より効率的かつ高度化したサービスを提供することが可能です。つまり、ベトナム人エンジニアの優れた資質と日本から持ち込んだナレッジを融合させることで、ベトナム人エンジニアの強みをさらに活かし、日本で提供する以上に高品質なサービスの実現を目指しています。

実際、SHIFTグループ内部でベトナムと日本を比較した場合、ベトナム人エンジニアのテスト設計、実行、開発などの能力の平均値が日本人エンジニアよりも劣るということは決してなく、開発プロジェクトをうまく管理・運営することで日本以上に品質の高いサービスを実現することは難しいことではありません。

おわりに

今回はベトナム人の特徴やベトナム人エンジニアを取り巻く状況についてご説明しました。次回以降は、他国との比較や実際のコストの目安なども交えながら、ベトナムにおけるソフトウェア開発の優位性や強みをご紹介したいと思います。