はじめに
DXやAIの隆盛をはじめ、近年のIT業界において世界規模での大きな動きが見られるなかで、オフショア開発業界においてもまた大きな変動が生じています。
そこで『オフショア開発白書(2023年版)(以下、同白書)』の内容および、ベトナムで実際にオフショア開発を行うわたしたちSHIFT ASIAが得た情報などをもとに、オフショア開発をめぐる最新動向について複数回にわたってご紹介します。
本記事では、同白書で紹介されているユーザー企業の実態調査によって得られたデータをもとに、オフショア開発の検討理由や活用期間、コスト削減効果といったトピックに関する最新動向について解説します。
なお、オフショア開発を検討する企業の動向やオフショア開発委託先国別ランキング、オフショア開発の多様化する活用方法については以下の記事でご紹介していますので、併せてご参照ください。
オフショア開発の検討理由として「リソース確保」がトップに
同白書によると、ユーザー企業がオフショア開発を検討する理由や目的として、「リソース確保」が「コスト削減」を上回りトップとなりました。
以降は「開発スピード向上のため」「グローバル戦略の一環」といった理由が続いていますが、詳細は以下のグラフの通りです。
オフショア開発における最も大きな理由や目的は、その黎明期から近年まで「コスト削減」でした。
直近の2021年、2022年の同アンケート結果でも、やはりオフショア開発の検討理由の1位は「コスト削減」となっていました。
しかし2023年のアンケートでは、オフショア開発の検討理由として1位が「リソース確保」となり、長らく1位となっていた「コスト削減」が2位となりました。
この順位の変動は、オフショア開発に求めるものが「コスト削減」から「リソース確保」に切り替わりつつあるという、オフショア開発の最新動向を象徴する大きな出来事と言えるでしょう。
その背景にはさまざまな状況の変化などが考えられますが、日本国内のIT人材の不足がますます拡大していることや、急速に進む円安によってコスト削減効果が限定的となってきていることの2つが大きな要因と見て間違いないでしょう。
実際にSHIFT ASIAでも、必要となるだけのITエンジニアが採用できない、あるいは要件を満たすIT人材が確保できないといった理由からお問い合わせを頂く機会が増えており、その傾向はますます高まっています。
オフショア開発の活用はますます拡大傾向に
日本におけるIT人材の不足がますます加速するなかで、同白書によれば、58.8%の企業が「オフショア開発を拡大していく」と回答しています。
残りの41.2%も「現状維持」と回答しており、今後「縮小していく」と回答した企業はありませんでした。
データとしてやや偏りがある可能性はありますが、いずれにせよオフショア開発のさらなる拡大を検討しているというユーザー企業が相当な割合で存在している可能性は非常に高いと考えられます。
日本の生産人口の減少が進むなかでIT人材が大きく増えていくことは考えにくいため、ITニーズの増加に合わせて生産性が極端に向上しない限りは、今後もオフショアによるITリソース確保の重要性は高まってくるでしょう。
自社で外国人エンジニアを採用するケースも
「ITリソース確保」の手段の一つとして、オフショア開発会社への委託だけではなく、「外国人エンジニアの採用」を行う企業も見られ始めています。
同白書によれば、その比率は前年から大きく変わっていないものの、67.6%のユーザー企業が「自社に外国人エンジニアがいる」と回答しています。
自社のIT人材を強化する狙いに加えて、社外のオフショア開発会社や自社のオフショア開発拠点のマネジメント、オフショア開発プロジェクトにおけるブリッジSEなどとして自社の外国人エンジニアを活用しているようです。
海外のITリソース活用が一般的になるにつれて、オフショア開発会社への委託だけでなく、自社でも外国人エンジニアの採用を進めていくという「開発体制の多国籍化」が今後もトレンドとして広がっていくかもしれません。
7割近くの企業が、オフショア開発を3年以上活用
続いては、ユーザー企業がどの程度の期間オフショア開発を活用しているのかについてのデータを見ていきましょう。
同白書によれば、ユーザー企業の65.7%がオフショア開発を3年以上活用しています。
オフショア開発は、基本的に取り組み期間が長くなればなるほどコミュニケーションやオペレーションが安定化・効率化され、その結果として生産性・費用対効果が高くなっていく傾向があります。
オフショア開発において運用が安定し、十分に生産性が高まるまでの期間の一つの目安が2~3年程度となることから、「オフショア開発を3年以上活用している」と回答した企業の多くは既に運用が軌道に乗っていると考えられます。
一度軌道に乗ってしまえばその後も安定的な運用が期待できることから、今後もオフショア開発を3年以上活用する企業の割合はますます増える可能性が高そうです。
オフショア開発によるコスト削減効果は約2割
オフショア開発は、国内開発に比べて比較的安価な人件費を背景にコスト削減を期待できることは広く知られる通りですが、オフショア開発国の人件費の上昇や円安の影響などによって、徐々にコスト削減効果が小さくなってきています。
同白書によれば、国内開発と比較したオフショア開発のコスト削減効果は平均21.5%でした。
昨年2022年の調査時と比べて約7%コスト削減率が低下し、ますます国内開発とオフショア開発のコストの差が縮まってきています。
とはいえ、21.5%という数値は平均的なコスト削減効果であり、特にオフショア開発の活用期間が中長期に及んでいる場合などにはそれ以上のコスト削減効果が得られる可能性もあります。
また、小規模案件ではブリッジSEなどの間接費によってコスト削減効果が限定的となりがちですが、中規模~大規模案件では間接費の比率が小さくなることから比較的大きなコスト削減を期待することができます。
\無料相談受付中/
SHIFT ASIAの特徴
わたしたちSHIFT ASIAは、ソフトウェア品質保証・第三者検証のリーディングカンパニーである 株式会社SHIFT(東証一部上場)の海外戦略拠点として、ベトナム・ホーチミンでマニュアルテストからテスト自動化やセキュリティテスト、インスペクションなどのソフトウェアの品質保証事業を手掛けながら、近年はオフショア開発にも事業領域を拡大させてきました。
経済産業省が2018年に発表したレポートによると、日本では2030年にはIT人材の不足が約16万人から79万人にまで拡大すると言われるなど、特にIT業界ではエンジニア不足が大きな問題になっていますが、SHIFT ASIAでは、こうした人材不足を解決する手段として、海外の優秀なエンジニア層を取り込み、彼らのリソースを活用しながら日本のお客様のニーズに応えるべく、優秀なベトナム人エンジニアの採用と育成に力を入れています。
最後になりますが、SHIFT ASIAのサービスを支える人材の特徴を以下にまとめてみましたので、ご参考までに是非ご覧ください。
SHIFT ASIAのサービスを支える人材の特徴
- 日本語コミュニケーション・・・日本語検定N1・N2以上を保有するテスター・エンジニアが100名以上在籍
- 英語コミュニケーション・・・英語対応のフルスタックエンジニアが50名以上在籍
- 日本人による安心の案件管理・・・在籍エンジニアのうち日本人が約10%を占め、案件管理をしっかり担当
- QA資格・・・多数のISTQB国際資格および社内検定資格を保有するプロフェッショナルが、さまざまなテストサービスを提供
オフショアでの開発やテストに関してお困りごとなどがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
お問い合わせContact
ご不明点やご相談などがありましたら、お気軽にお問い合わせください。