2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大を受け、日本企業におけるオフショア開発の位置づけにも大きな変化が見られました。今回は、日本最大級のオフショア開発のためのマッチングサイト、オフショア開発.com(運営・株式会社Resorz)がこのほど公開した『オフショア開発白書(2021年版)(以下、同白書)』などをもとに、オフショア開発をめぐる最新動向を紐解いてみたいと思います。
同白書によると、2020年は大企業(従業員1,001名以上)に加え、小規模企業(同10名以下)からのオフショア開発に関する相談が前年比でそれぞれ大きく伸びたのが大きな特徴として挙げられています。具体的には全体の相談件数に占める大企業の比率が前年の8%から14%に、小規模企業の比率も40%から56%にそれぞれ拡大しています。
なお、オフショア開発白書(2023年版)から読み解くオフショア開発の最新動向については以下の記事で紹介していますので、新しい情報を探している方はこちらの記事もご参照ください。
新規サービス開発のためにオフショアを活用する取り組みも加速
このようにオフショア開発に対するニーズが大企業から小規模企業にまで拡大した背景には、新型コロナウイルスにより人々の働き方が大きく変わったことも影響していると思われます。感染防止の観点から多くの企業がリモートワークへの移行に迫られた結果、開発現場においてもより幅広い業務でリモートワーク対応が進みました。これにより顧客と直接対面しなくてもできる業務であれば、日本であろうと、ベトナムなどの海外拠点であろうと、変わらない品質で提供できるということが開発現場で広く理解されるようになったことが、オフショア開発への関心の高まりにも影響しているのは間違いありません。
さらに、同白書では大企業がオフショア開発に注目している理由として「国内ITリソースのひっ迫」を挙げています。これは、日本国内のIT人材の不足やそれに伴う単価の上昇を受け、これまで人員面で比較的余裕のあった大企業でも海外のエンジニアを活用し、必要なITリソースを確保する動きが強まっていることを裏付けるものと言えるでしょう。また、小規模企業からの問い合わせが増加した背景としては、コロナ禍で既存ビジネスに大きな変革が迫られているのを好機とし、スタートアップ企業を中心に新規事業やサービスを創出する目的でオフショアの活用が加速している面が指摘されています。
オフショア開発と言えば、従来は日本と発展途上国間の賃金格差を背景に「コスト削減」を狙いとした活用が主流を占めていましたが、最近では新たに「ITリソースの確保」や「新規ビジネスの創出」を目的とした動きも強まっており、同白書でもこうした傾向が明らかになった格好です。
過半数の企業がベトナムを選好、オフショア開発はベトナム一強の時代に
次に、オフショア開発を進める上で、どの国が委託先として選好されているのかについてご紹介していきます。同白書の調査によると、オフショア開発先の人気国ランキングは、ここ数年ベトナムが圧倒的な一番人気となっており、2020年も実に50%以上の企業がオフショア開発先としてベトナムを希望していることが明らかになっています。開発先としてベトナムが選ばれる理由として、同白書は1)親日であること、2)勤勉な国民性、3)地理的近さ、4)単価の安さ、5)豊富な日本語人材――などを挙げています。
オフショア開発委託先の国別ランキングと比率
このほか、ベトナムでは政府が普通教育でSTEM(科学・技術・工学・数学)人材の育成やEラーニングなどのITツールの活用を推進しており、数学的リテラシーの高い人材が多く育ってきていることも注目されています。JETROの調査によると、ベトナム政府は外国語および情報技術の教育に注力しつつ、教員の質の向上、教育のデジタル化を進めており、ハノイやホーチミンなどの大都市では小学生を対象にした英語教育やコンピューター教育も広く行われています。
そうした成果の例として、 OECDが2015年に15歳を対象に実施した国際的な学力到達度調査、PISA(Programme for International Student Assessment)でベトナムが科学的リテラシー:525点(70カ国中8位)、読解力:487点(同32位)、数学的リテラシー:495点(同22位)で、東南アジアではシンガポールに次ぐ高得点を記録したことはよく知られています。
また、こうしたオフショア開発に適した人材の質の高さに加え、ベトナム国内には日系やベトナム系など、さまざまなニーズに対応できる開発企業が存在するという点も見逃せません。同白書は、株主の属性や設立経緯などをもとに以下の3つにオフショア開発会社を分類しています。
・ベトナム資本によってベトナム人が設立したケース(特長:単価が安め)
・日本資本によって日本人が設立したケース(特長:日本企業向けサービスが充実)
・日本企業のオフショア拠点が、他社の案件も受けるようになったケース(特長:実績が豊富)
さらに、同白書ではこうした分類に加え、ベトナムを拠点とした開発企業の多様性を以下のように指摘しており、こうした選択肢の豊富さが「ベトナム一強」とも言える現在の人気を支えている理由と言えるでしょう。
また、ベトナムの中では、ハノイ・ホーチミンという二大都市に集中していたオフショア開発企業が、ダナンやフエといった地方都市へと分散してきています。そのため、コスト面や得意分野、特長などもさらに細分化しており、発注側の企業は多くの企業に見積もりを依頼し、自社に合ったオフショア開発企業を選択することが可能です。
このように選択肢の幅が広くなっていることは、ベトナムがオフショア開発先に選ばれる大きな要因になっているはずです。第2部でも取り上げますが、オフショア開発を検討する企業が企業選定の際に比較する企業の数は、ベトナムにおいては顕著に多くなっています。そのため、自社と相性の良い会社を見つけやすい素地があると言えます。
なお、ベトナムでも経済成長に伴い開発単価が上昇する中、一部の企業では“ポストベトナム”としてミャンマーやバングラデシュなどでの開発を模索する動きも出ています。しかしながら、今年に入ってミャンマーでは政変により経済的、社会的な混乱が広がるなど、政治面でのリスクが台頭している現状を踏まえると、ベトナム国内における安定した政治体制、そして全方位外交政策に代表される国際社会との協調姿勢もベトナムの大きな強みと言えるでしょう。
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SHIFT ASIAの特徴
我々SHIFT ASIAは、ソフトウェア品質保証・第三者検証のリーディングカンパニーである 株式会社SHIFT(東証一部上場)の海外戦略拠点として、ベトナム・ホーチミンでマニュアルテストからテスト自動化やセキュリティテスト、インスペクションなどのソフトウェアの品質保証事業を手掛けながら、近年はオフショア開発にも事業領域を拡大させてきました。経済産業省が2018年に発表したレポートによると、日本では2025年にはIT人材の不足が約43万人まで拡大すると言われるなど、特にIT業界ではエンジニア不足が大きな問題になっていますが、SHIFT ASIAでは、こうした人材不足を解決する手段として、海外の優秀なエンジニア層を取り込み、彼らのリソースを活用しながら日本のお客様のニーズに応えるべく、優秀なベトナム人エンジニアの採用と育成に力を入れています。
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