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2023年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向 オフショア開発

更新日:2023/10/26 SAブログ編集部

2023年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向

はじめに

2022年から2023年にかけて、極端な円安や更なるDXの加速、ChatGPTをはじめとする生成AIの隆盛など、IT業界において世界規模でさまざまな大きな動きがありました。
こうしたなかで、オフショア開発業界においても大きな変動が生じています。

そこで今回は、『オフショア開発白書(2023年版)(以下、同白書)』の内容および、ベトナムで実際にオフショア開発を行うわたしたちSHIFT ASIAが得た情報などをもとに、オフショア開発をめぐる最新動向についてご紹介します。

なお、ユーザー企業の実態調査によって得られたデータをもとに、オフショア開発の検討理由や活用期間、コスト削減効果といったトピックに関しては以下の記事でご紹介していますので、併せてご参照ください。

2023年版『オフショア開発白書』ユーザー企業実態調査にみる、オフショア開発の最新動向

オフショア開発を検討する企業の動向

まずは、オフショア開発を検討する日本企業(クライアント)の動向についてみていきましょう。

企業規模の変化

同白書によると、オフショア開発の相談があった企業の規模別割合は以下の通りです。

10名以下:38%
11~50名:16%
51~100名:8%
101~500名:13%
501~1000名:5%
1001~5000名:7%
5001名以上:14%

前年と比べると、主に以下のような変動がありました。

  • 100名以下の企業割合が69%→62%と減少
  • 特に11〜50名で21%→16%と減少
  • 5001名以上の割合は7%→14%に増加

このデータによれば、従業員数100名以下、特に11~50名の中小規模の企業によるオフショア開発のニーズが減少しているようです。

その背景としては、中小規模の企業はオフショア開発の主要な目的に「コスト削減」をおいていた企業が多く、オフショア先の人件費向上や大幅な円安によりコスト削減効果が減少したことが考えられるでしょう。
結果として、中小企業を中心に、オフショア開発から内製化やニアショアを含む国内開発への回帰が起きている可能性もあります。

その一方で、従業員数5001名以上の企業の割合は7%→14%に倍増しています。
したがって、多くのITリソースを必要とする大規模企業では、国内のIT人材不足に対して海外のIT人材を確保するために、円安に関係なくオフショア開発の検討が進んでいると見られます。

実際に、SHIFT ASIAでも以前に比べて大企業からの問い合わせやウェビナーの参加が増えており、大企業によるオフショア開発ニーズが高まっていることが実感としてもあります。

DODAによる転職求人倍率レポート(2024年7月)でもITエンジニアの求人倍率が10倍を超えており、国内のITエンジニアの不足がますます拡大してきていることがその背景としてあると考えられます。

企業属性の変化

続いて、同白書によるオフショア開発の相談があった企業の属性割合は以下の通りです。

なお、「ベンダ」とはSIerやシステム開発会社などを指し、クライアントに対して開発などのITサービスを提供する企業のことを指しています。
また「エンドユーザー」は、自社でサービスやプロダクトを開発しており、その開発にオフショア開発を活用しようとしている企業のことです。

こちらのデータによると、エンドユーザーが67%と過半数を占めており、ベンダの33%の倍程度の割合となっています。しかし、前年と比べるとベンダの割合が25%→33%と拡大しています。
その背景としては、古くから日本の主要オフショア開発先であった中国の人件費増やカントリーリスクの影響などから、中国から東南アジアをはじめとする他地域のオフショア開発会社へのスイッチ先を探しているベンダが増加してきている可能性が考えられます。

また、エンドユーザーについては上でも述べた通り、オフショア開発から内製化や国内回帰が進んでおり、相対的にベンダの割合が高まったという可能性があります。

こちらも同様に、SHIFT ASIAでもベンダからの問い合わせがやはり増加しています。
特に印象的なこととしては、ベトナムにオフショア開発拠点を立ち上げた・あるいはこれから立ち上げようとしているベンダからの意見交換の依頼が増えていることです。

日本国内のIT人材のひっ迫とそれに伴う人件費増などによって、ベンダもまたオフショアへの移行を余儀なくされていると見ることができるかもしれません。

2023年のオフショア開発委託先国別ランキング

続いて、2023年のオフショア開発の検討先の国別ランキングを見ていきましょう。
同白書によると、以下のようなランキングになっています。

1位:ベトナム(48%)
2位:フィリピン(21%)
3位:インド(13%)
4位:バングラデシュ(8%)
5位:中国(4%)・ミャンマー(4%)
6位:ウクライナ(2%)
※ただし「指定なし」が全案件の「64.8%」

人気のオフショア開発先として、ベトナムが1位を継続

オフショア開発の検討先国別ランキングでは、引き続きベトナムが1位となっています。
2021年・2022年から変わらず、2023年もベトナムが1位を継続している形です。
2021年・2022年・2023年の直近三年間はその割合もほぼ変わらず、ベトナムは50%近い割合で推移しています。

ベトナムがオフショア開発先として人気を集める理由としては、以下のような理由が考えられるでしょう。

  • 国策などを背景に、ITの専門教育を受けたIT人材が5万人程度毎年安定的に供給される
  • 10年以上にわたる日本向けオフショア開発により、経験やノウハウが溜まってきており、実績・信頼性ともに高いレベルに達してきている
  • 日本向けのオフショア開発サービスを提供する会社の数が膨大で、選択肢も豊富
  • 経験・スキルともに高く、かつAIをはじめとする先端技術にも精通したITエンジニアが豊富
  • 語学力が高く、日本語・英語対応のITエンジニアも豊富
  • 単価が上がってきてはいるものの、まだ一定のコストメリットを期待できる水準であり、品質とコストのバランスが良い

一方で日本語か英語が使え、技術力も高いIT人材はベトナムでも取り合いが始まっています。特にレベルが高い上位層のIT人材は欧米諸国との取り合いになるため、人件費の上昇要因となっています。

しかしながら、ベトナムとほかのオフショア開発を行う国々とを比較した場合、やはり品質とコストのバランスが良く、実績も十分で安心して取引をしやすい開発会社が多いのは依然としてベトナムと言えるでしょう。

ベトナムがオフショア開発先として人気を集める理由については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
ぜひこちらの記事も併せてご参照ください。

オフショア開発でベトナムが選ばれる3つの理由|『オフショア開発白書』が示す強みとは

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英語話者が多い、フィリピン・インドの人気が向上

2位のフィリピンは前年19%から21%に、3位のインドは前年12%から13%とそれぞれ若干人気シェアを伸ばしています。

フィリピンとインドはどちらも英語を得意とする国であり、オフショア開発でも基本的に英語を使ってプロジェクトを進めます。したがって、英語を共通言語としてプロジェクトを進めたい企業にとっての選択肢として人気を集めてきました。

人口減や経済力の低下が懸念されている日本において、今後グローバル市場への展開を前提としたサービスやプロダクトの増加が見込まれていますが、その開発や運用のため英語でのプロジェクト推進に舵を切っている企業が増えている可能性があり、その結果として英語を得意とするフィリピン・インドの人気がさらに高まってきているのかもしれません。

また同白書によれば、コミュニケーションを複雑にするブリッジSEを配置せず、日本側も英語を使い開発メンバーとも直接やりとりすることで、ミスコミュニケーションが発生しづらい開発スタイルを好む企業も増えてきているようです。

実際に、SHFT ASIAにお問い合わせをいただく日本企業でも、以前は「日本語使用が必須」という企業が多かったものの、近年では使用する言語は「日本語でも英語でもどちらでも可」という企業が増えてきています。

日本企業内に英語人材が増えてきている可能性もありますが、Google翻訳やDeepLをはじめとする翻訳ツールの精度向上などもその背景にあることは間違いないでしょう。チャットやメールなどのテキストでのやりとりであれば、英語が得意でない場合でも翻訳ツールを使用することで、大きな支障なくやりとりをすることが可能となってきています。

なお、SHIFT ASIAが拠点を構えるベトナムでも英語を使うことができるITエンジニアの数は多く、特に日系をはじめとする外資企業でオフショア開発に携わるITエンジニアであれば、英語を使用できる人材がほとんどという印象です。

SHIFT ASIAでは、ITエンジニアであれば日本語か英語(あるいは両方)をビジネスレベル以上で使用できるITエンジニアのみを採用しておりますため、英語が必須のプロジェクトでも対応することが可能です。
そのため、プロジェクトで使用する言語として英語を希望される場合でも、お気軽にSHIFT ASIAにご相談ください。

中国・ミャンマーは、カントリーリスクの影響か人気が伸び悩み

同率で5位につけた中国とミャンマーについて、中国は前年7%から4%に人気シェアが下降、一方ミャンマーは前年2%から4%と若干人気シェアを伸ばしました。

中国とミャンマーは、両国ともにカントリーリスクが懸念されている影響か、ベトナム・フィリピン・インドをはじめとするオフショア開発で人気を集める国々と比べると、人気が低い傾向が続いています。

ミャンマーに関しては、記憶にも新しい2021年に発生したクーデターの影響からか、ミャンマーで事業を展開する企業との取引に慎重になっているようです。
特にシステム開発などはプロジェクトが中長期に及ぶことも多く、地政学的なリスクを取りにくいという背景もあることから、オフショア開発先としてのミャンマーの人気が限定的となっている可能性があります。

中国に関しては、いわゆるチャイナリスクとして、共産党の一党支配を背景としたドラスティックなビジネス環境の変化がいつでも起こり得るということに加え、経済発展にともなう人件費の上昇がオフショア開発先としての中国の人気を押し下げている要因であることは間違いないと言えます。

そもそもオフショア開発において近年東南アジアの人気が高まっている大きな理由の一つとして、こういったチャイナリスクを回避するためのチャイナ・プラスワンとしてベトナムをはじめとする東南アジアが脚光を浴びていることが挙げられます。

今や、中国はアメリカに次ぐ世界第二位のGDPを誇る経済大国となっており、今後もますます人件費の水準が上がっていくことはほぼ間違いないでしょう。
特に北京や上海をはじめとする大都市圏においては、現地のITエンジニアの給与水準が日本を超えるケースも珍しくありません。

したがって、コスト削減を目的としたオフショア開発においては、今後中国が選ばれるケースはさらに減っていく可能性が高いと言えます。

一方で、中国はその豊富なIT人材と長いオフショア開発の歴史から、より高い技術力や多くのITリソースを必要とする企業(特に大手企業)を中心に、引き続きオフショア開発先として選択されるケースは十分に考えられるでしょう。

オフショア開発の活用方法が多様化

同白書では、オフショア開発の活用方法における多様化がますます進んでいると述べられています。
そこで続いては、同白書の内容や実際の事例などを踏まえ、オフショア開発の活用方法についての最新動向についてご紹介します。

ユーザー企業がオフショア開発拠点を設立するケースがより見られるように

オフショア開発においては、海外に拠点を構える外部のオフショア開発会社にシステム開発などの業務を委託するという形が一般的です。

しかしながら、近年では外部の海外企業に開発業務を委託するのではなく、ユーザー企業自らが海外に進出し、現地に自社プロダクトのオフショア開発拠点を設ける動きがより見られるようになってきています。
近年の例としては、2022年11月に発表されたSansan株式会社のフィリピン開発拠点の設立が注目を集めました。

参照:Sansan株式会社、フィリピン・セブ島にグローバル開発センターを設立

SHIFT ASIAが拠点とするベトナムでも、2010年代半ばから株式会社ラクスやヤフー株式会社、株式会社マネーフォワードをはじめ多くの日本企業による自社オフショア開発拠点の設立が進んでいます。

今後も日本で不足するIT人材の確保を主な目的として、海外での自社オフショア開発拠点設立の流れがさらに加速していく可能性も十分考えられます。

しかしながら、いきなり海外に自社開発拠点を設立するというのはリスクが大きく、また実際に得られる成果も不透明です。
したがって、まずは外部のオフショア開発会社を活用するところから始めるのが一般的です。

ラボ契約が増加傾向に

外部のオフショア開発会社にシステム開発などの業務を委託する際の契約形態としては「請負契約」と「ラボ契約」の2種類が一般的です。まずは「請負契約」ではじめ、徐々に「ラボ契約」に移行していく形が推奨されることが多いものの、「ラボ契約」によるラボ型開発から開始するというケースもまたよく見られています。

ラボ契約によって行われるラボ型開発は、事前に仕様が固まっていない場合でもスムーズに始めることができ、また中長期的に同じ人材を確保できることや、短期的なトライアルもしやすいといったメリットがあることから、近年ますます活用が増えている形態です。

同白書によれば、オフショア開発案件の契約形態別の割合としてはラボ契約が63%、請負契約が37%と、ラボ契約が過半数を占めています。
またラボ契約の割合は請負契約の1.7倍となっており、多くのユーザー企業がラボ契約を選択していることがわかります。

ラボ型開発は発注側のマネジメントが必要となることもあり、うまく運用するためにはコツがいる側面もありますが、比較的小規模・短期で始めやすいという利点もあります。

こういった面から、ラボ型開発はオフショア開発のトライアルとしても活用しやすいため、これからオフショア開発を活用したい、あるいは将来的に自社のオフショア開発拠点の設立を検討したいという場合は、まずはラボ型開発を活用してみるのも良いでしょう。

わたしたちSHIFT ASIAでは、ユーザー企業さまにより柔軟に活用いただけるよう、最小1人月からのラボ型開発にも対応しております。
ラボ型開発にご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

SHIFT ASIAの特徴

わたしたちSHIFT ASIAは、ソフトウェア品質保証・第三者検証のリーディングカンパニーである 株式会社SHIFT(東証一部上場)の海外戦略拠点として、ベトナム・ホーチミンでマニュアルテストからテスト自動化やセキュリティテスト、インスペクションなどのソフトウェアの品質保証事業を手掛けながら、近年はオフショア開発にも事業領域を拡大させてきました。

経済産業省が2018年に発表したレポートによると、日本では2030年にはIT人材の不足が約16万人から79万人にまで拡大すると言われるなど、特にIT業界ではエンジニア不足が大きな問題になっていますが、SHIFT ASIAでは、こうした人材不足を解決する手段として、海外の優秀なエンジニア層を取り込み、彼らのリソースを活用しながら日本のお客様のニーズに応えるべく、優秀なベトナム人エンジニアの採用と育成に力を入れています。

最後になりますが、SHIFT ASIAのサービスを支える人材の特徴を以下にまとめてみましたので、ご参考までに是非ご覧ください。

SHIFT ASIAのサービスを支える人材の特徴

  • 日本語コミュニケーション・・・日本語検定N1・N2以上を保有するテスター・エンジニアが100名以上在籍
  • 英語コミュニケーション・・・英語対応のフルスタックエンジニアが50名以上在籍
  • 日本人による安心の案件管理・・・在籍エンジニアのうち日本人が約10%を占め、案件管理をしっかり担当
  • QA資格・・・多数のISTQB国際資格および社内検定資格を保有するプロフェッショナルが、さまざまなテストサービスを提供

オフショアでの開発やテストに関してお困りごとなどがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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