2023年は、OpenAIのChatGPTを筆頭に生成AIが大きな盛り上がりを見せ、生成AIはもはやトレンドという枠を超えて今やビジネスに無くてはならないものとなりつつあります。
そうした2023年を経て、2024年にはどのようなテクノロジに注目すべきなのでしょうか。
本記事では、2024年に大きな発展や注目が見込まれそうな最新のITトレンドをご紹介するため、ガートナーの発表をもとに、2024年のテクノロジ動向について解説します。
2024年のITトレンドにおける3つのテーマ
ガートナーの日本法人であるガートナージャパンは、2023年11月に2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表し、2024年に企業や組織にとって重要なインパクトを持つ10のトレンドを示しました。
Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表” より
同社はこれら10の技術トレンドについて「投資の保護(Protect Your Investment)」、「ビルダーの台頭(Rise of the Builders)」、「価値のデリバー(Deliver the Value)」という3つの包括的なテーマに分類しました。
これらの3つのテーマについて、それぞれどのような技術トレンドと関連するのかについてまずはみていきましょう。
投資の保護:Protect Your Investment
「投資の保護」に含まれるトレンドは、「より信頼のできる、安全に使える、そしてESG(環境、社会、ガバナンス)にも配慮した持続可能な未来」を形作る以下のトレンドと関連します。
- AI TRiSM (AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメント)
- 継続的な脅威エクスポージャ管理
- インダストリ・クラウド・プラットフォーム
- 持続可能なテクノロジ
- ジェネレーティブAIの民主化
ビルダーの台頭:Rise of the Builders
「ビルダーの台頭」に含まれるトレンドは、「アプリケーションやサービスの開発および運用に関わるすべての人が、効率的で創造的な力を発揮できるような環境の構築」を目指す以下のトレンドが関連します。
- プラットフォーム・エンジニアリング
- AI拡張型開発
- インダストリ・クラウド・プラットフォーム
- インテリジェント・アプリケーション
- 持続可能なテクノロジ
- ジェネレーティブAIの民主化
価値のデリバー:Deliver the Value
「価値のデリバー」に含まれるトレンドは、「これからの時代により求められる迅速でより賢い意思決定を行うため、あるいはこれからの時代にふさわしい新たなエクスペリエンスに移行」するための以下のトレンドが関連します。
- マシン・カスタマー
- 拡張コネクテッド・ワークフォース
- インテリジェント・アプリケーション
- 持続可能なテクノロジ
- ジェネレーティブAIの民主化
引用:Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
GARTNERは、Gartner Inc.または関連会社の米国およびその他の国における登録商標およびサービスマークであり、同社の許可に基づいて使用しています。All rights reserved.
以上のように、10のITトレンドと3つのテーマとは一対一の関係ではなく、複数のテーマにまたがる形で関連するトレンドが存在します。
そのなかでも、「持続可能なテクノロジ」と「ジェネレーティブAIの民主化」の2つのトレンドは3つのテーマすべてに関連していることから、特に重要なITトレンドであると弊社は考えています。
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2024年に重要となる10の技術トレンド
続いては、ガートナーによる2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドについて、ガートナーのリリースと記事を参考としながら一つずつみていきましょう。
なお、以降「」で囲まれた箇所は明記されているガートナーのプレスリリースおよび記事からの引用であり、それ以外の箇所は、弊社による見解や補足的な説明となります。
AI TRiSM (AI Trust, Risk, Security Management:AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメント)
AI TRiSM(AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメント)は、AIシステムを適切に管理し、AIにコンプライアンスを遵守させることによって、データのプライバシーを保護することを保証するための包括的なテクノロジです。
AI TRiSMは、AI活用において大きなリスクとなっている『ユーザーはAIモデル内で実際のところ何が起きているのかがわからない』というブラックボックス化から生じるリスクを軽減すると考えられます。
AIを採用する組織は、AI TRiSMによってより効果的にAIを活用できるようになり、ビジネス目標の達成にも寄与することが期待されます。
ガートナーによると、「2026年までに、AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメントのコントロールを適用する企業は、誤った情報や不正な情報を最大80%排除し、意思決定の精度を高めるようになる(*1)」と見られています。
出典:
*1 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
CTEM (Continuous Threat Exposure Management:継続的な脅威エクスポージャ管理)
CTEM(継続的な脅威エクスポージャ管理)は、ますます高まるサーバーセキュリティの脅威に対して、組織がより効果的に対応するための戦略的な取り組みです。
CTEMは、従来の方法では不十分だった将来のセキュリティリスクへの対策を強化し、ビジネスにとって重大な脅威を特定することで対応の優先順位をつけることを可能とします。
それによって脅威に対する継続的な対策とセキュリティに対する投資を最適化し、組織のセキュリティリスクを大幅に減少させることが期待されています。
ガートナーによると、「2026年までに、継続的な脅威エクスポージャ管理プログラムに基づいてセキュリティ投資の優先順位を設定している組織は、セキュリティ侵害を3分の2減らせるようになる(*2)」と見られています。
出典:
*2 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
持続可能なテクノロジー
持続可能なテクノロジは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の成果を推進するためのデジタルソリューションのフレームワークです。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉であり、企業の長期的で持続可能な成長のために必要な3つの観点を表しています。
AIや暗号通貨をはじめとする現代のテクノロジは、その先進性ゆえに、環境や社会、ガバナンスへのさまざまな影響が懸念されています。
そうしたなかで、持続可能なテクノロジはコスト削減やエネルギー効率の向上、資源活用の最適化に加え、人々の健康増進や責任ある企業活動の追跡可能性を提供することを通じて、ESG目標達成につながることが期待されています。
ガートナーによると、「2027年までに、CIOの報酬の25%はサステナブルテクノロジへの貢献度に連動するようになる(*3)」と見られています。
出典:
*3 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
プラットフォーム・エンジニアリング
顧客ニーズは多様化し、ますますその変化のスピードは速くなっています。
それに伴ってプロダクトのライフサイクルも早まるなかで、開発の効率や生産性の向上がますます重要となっています。
こういった状況に対応するために新たな手法として注目を集めているのがプラットフォーム・エンジニアリングです。
プラットフォーム・エンジニアリングは、アプリケーション提供とビジネス価値創出を加速させるテクノロジのアプローチであり、再利用可能なコンポーネントや、ツール、様々なプラットフォームサービス、ナレッジなどを自社のプラットフォーム上で管理・運用します。
この手法によって開発者の生産性が向上し、より迅速に顧客価値を提供できるようになると期待されています。
ガートナーによると、次のように見られています。
「By 2026, 80% of large software engineering organizations will establish platform engineering teams as internal providers of reusable services, components and tools for application delivery.(*4)」(2026年までに、大規模なソフトウェアエンジニアリング組織の80%が、アプリケーション配信のための再利用可能なサービスやコンポーネント、ツールの内部プロバイダーとしてプラットフォームエンジニアリングチームを設立する予定。)
出典:
*4 Gartner® What Is Platform Engineering?, Lori Perri, 26 October 2023
AI拡張型開発
AI拡張型開発は、アプリケーションの設計やコーディング、テスト支援に生成AIや機械学習などのAIテクノロジを利用する開発のことです。
AI拡張型開発によってソフトウェア開発に関する作業の一部を自動化することで開発者の生産性を高め、高まり続けるソフトウェアのニーズに開発者が対応しやすくすることを支援します。
その結果として、開発者がコーディングなどに要する時間を短縮し、より価値提供に直結する設計や構成といった上流工程に割ける時間を増やすことが期待されています。
一方で、こちらの10の技術トレンドにも挙げられているAI TRiSMにもあるように、生成AIをソフトウェア開発に活用することはデータプライバシーの違反や知的財産の流出、そして出力されたコードの正しさなどに関するリスクがある点には注意が必要です。
インダストリ・クラウド・プラットフォーム
インダストリ・クラウド・プラットフォームは、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を組み合わせたものであり、特定の業界ニーズに特化したソリューションを提供するために設計されたクラウドプラットフォームです。
インダストリ・クラウド・プラットフォームを通じて、業界特有のビジネスやデータ、コンプライアンスなどのニーズに迅速に対応し、変化を加速させる柔軟な方法を提供することを可能とします。
「2027年までに、企業の70%以上は、ビジネス・イニシアティブを加速させるためにインダストリ・クラウド・プラットフォームを使用するようになるとGartnerではみています。これは2023年の15%未満からの増加になります。(*5)」
出典:
*5 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
インテリジェント・アプリケーション
インテリジェント・アプリケーションは、AIを活用してトランザクションや外部からのデータによって自ら学習し、適切な反応を自律的に行うことができるアプリケーションです。
インテリジェント・アプリケーションは、分析の実行やアクションの提案、作業の自動化などに活用され、よりパーソナライズされた対応やリソースの効率化、正確性の向上などを通じて、より細かな対応と意思決定サポートを実現します。
ガートナーによれば、「2026年までに、独立系ソフトウェア・ベンダー (ISV) の80%以上が、エンタープライズ・アプリケーションにジェネレーティブAI機能を組み込むことになり、2023年の1%未満から増加する(*6)」と見られています。
出典:
*6 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
ジェネレーティブAIの民主化
ジェネレーティブAI(生成AI)の民主化が進むことで、世界中の人々がこれまで以上に生成AIを活用し、新しい製品の迅速なアイデア出しや会話形式での情報取得などを通じて、格段に多くの情報やスキルにアクセスできるようになります。
ガートナーによると、「2026年までに、80%以上の企業は、ジェネレーティブAIのAPIとモデルを使用し、本番環境でジェネレーティブAI対応のアプリケーションを展開するようになる(*7)」と見られています。
その結果として人々の生産性や効率の飛躍的な向上が期待されていますが、その一方で生成AIの幅広い活用には機密データの漏洩やデータの誤用といったリスクも伴います。
ITリーダーはこれらのリスクを軽減しつつ生成AIの価値を最大化するために、使用事例の優先順位付けやビジネス価値の定量化、変更管理アプローチの採用といった行動を取る必要があるでしょう。
出典:
*7 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
拡張コネクテッド・ワークフォース
拡張コネクテッド・ワークフォースは、従業員の能力開発やウェルビーイングの向上を目的とし、インテリジェント・アプリケーションやワークフォース・アナリティクス(労働力分析)を駆使して従業員に日々の業務で必要な情報やサポートを提供することにより、人材の価値を最大化するための戦略です。
このアプローチによって人材活用の効率化と人材の能力拡大を推進し、ビジネス成果の向上を通じて重要なステークホルダーに利点をもたらします。
ますます高まる人材価値の最大化に対するニーズに応える形で、このトレンドは盛り上がりを見せています。
ガートナーによると、「2027年末まで、CIOの25%は、拡張コネクテッド・ワークフォースのイニシアティブを利用して、重要な職務のコンピテンシ獲得に要する時間を50%短縮する(*8)」と見られています。
出典:
*8 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
マシン・カスタマー
マシン・カスタマー(顧客ボット)は「支払いと引き換えにモノやサービスを自律的に交渉・購入できる」、AIによって駆動する顧客です。AIによって加速されるマシン・カスタマー(顧客ボット)のトレンドは、デジタルサービスに対する新たな需要を生み出しています。
マシン・カスタマーは人間に比べてより合理的かつ論理的な購買行動を示し、人間の顧客とは異なるニーズと振る舞いを持っています。
企業は、製品やサービス情報をAIに対応させることや、デジタル商取引戦略にマシン・カスタマーを組み込むこと、そしてAIエージェントと連携できるセールスやサービススタッフを訓練することで対応する必要があります。
ガートナーによれば、「2028年までに、顧客として行動する可能性のあるコネクテッド・プロダクトが150億個存在するようになり、さらに数年間で数十億個増加する(*9)」と予想されています。
出典:
*9 Gartner®, プレスリリース, 2023年11月14日, “Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表”
GARTNERは、Gartner Inc.または関連会社の米国およびその他の国における登録商標およびサービスマークであり、同社の許可に基づいて使用しています。All rights reserved.
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