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2025年の崖とは何か|レガシーシステムの「塩漬け」からの脱却がDX推進のカギに DX

更新日:2024/10/11 SAブログ編集部

2025年の崖とは何か|レガシーシステムの「塩漬け」からの脱却がDX推進のカギに

経済産業省が2018年に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(以下、同レポート)』は、日本企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に立ちはだかるさまざまな課題を指摘した内容として公開直後からIT業界を中心に大きな注目を集めました。特にレポートの題名にも付けられた「2025年の崖」は、数年先に差し迫った危機を具体的に示すキーワードとして、今では企業のIT担当者が知っておかなければならない必須用語になっています。

そこで今回は、2025年の崖はどうして「崖」であるのかという点も含め、2025年の崖について解説していきたいと思います。

2025年の崖_2
2025年の崖_2

2025年の崖とは|なぜ「崖」なのか

「2025年の崖」とは、2025年に基幹系システムの老朽化、いわゆるレガシーシステム化や40万人を超える深刻なIT人材不足などに日本が直面するという問題を「崖」という比喩で表現し、警鐘を鳴らしたものです。
経済産業省は日本企業がこうした課題にうまく対処できない場合、2025年以降で年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると指摘しています。

特に複雑化・老朽化・ブラックボックス化したレガシーシステムを「塩漬け」にしたまま2025年を迎えた場合、企業はDXの実現が遠のくばかりか、既存のITシステムの保守・運用すらままならない「崖っぷち」に立たされるリスクを指摘したことで大きな波紋を呼びました。

では、そもそもなぜこの問題が「崖」という比喩で表現されているのかについて、まず考えてみたいと思います。

「壁」は乗り越えられるが、「崖」は落ちるしかない

目の前に立ちはだかる課題を言葉として表現する場合、一般的には「壁」という単語が用いられるケースが多いのではないでしょうか。しかし、同レポートでは2025年に迫る課題を「壁」ではなく、敢えて「崖」というキーワードで言い表しています。これの意味するところは何でしょうか。

例えば、自分が進む方向の先に大きな壁がそびえ立っている状況を想像してみてください。壁というのは近づけば近づくほど、その大きさや高さなどを自分の目で確かめることができます。つまり、その壁(課題)の高さがどの程度であるのかを見極め、事前に対策を講じることができれば、乗り越えられるものと言えます。

これに対し、自分が進んでいる道の前方が切り立った断崖になっている場合はどうでしょうか。イメージしていただきたいのは道が突然途切れ、足元に険しい谷底が見えるような状況です。このように前方に険しい崖が存在するというのは遠くからは一見する限りでは気づかないばかりか、実際に崖っぷちにたどりついて足元を覗いてみないと谷底の深さがどれくらいなのかも分からないものです。

つまり、予期せぬ崖というのは事前の対策が難しい上、気づいてから小手先の対応で飛び越えられるものでもないということです。その意味で「崖」が道の先に見えた場合に取れる選択肢というのは、立ち止まるか、後退するか、あるいはそのまま落ちるしかないのです。

「2025年の崖」レポートは問題の本質と奥深さを巧みに指摘

「2025年の崖」レポートが大きな波紋を呼んだ背景には、このようにITシステムの運用・保守の現場に根深く残る問題を「崖」という巧みな比喩で的確に指摘した点にあります。

その上で、仮にこうした課題に企業がうまく対処しなければ、2025年を境に具体的に以下のような転落シナリオが想定されるとして警鐘を鳴らしています。

ITシステムを利用するユーザ企業に生じるリスク:
・ 爆発的に増加するデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者になる
・多くの技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる
・ サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクが高まる

ITシステムの開発や運用・保守支援などを行うベンダー企業に生じるリスク:
・技術的負債の保守・運用にリソースが取られ、最先端のデジタル技術を担う人材を確保できない
・ レガシーシステムサポートに伴う人月商売の受託型業務から脱却できない
・ クラウドベースのサービス開発・提供という世界の主戦場を攻めあぐねる状態に陥る

当然これらのリスクは企業がDXを推進する上での大きな足かせにもなるため、このまま放置すれば、DXの実現も大きく遠のいてしまうと言っても過言ではありません。

レガシーシステムの「塩漬け」がDX実現の大きな足かせに

「2025年の崖」レポートはタイトルにもある通り、DXを本格展開する上で克服しなければならない課題を洗い出したものです。

このうち、特にレガシーシステムをそのまま使い続ける、いわゆる「塩漬け」状態にしたまま放置し続けることに対するリスクや課題を浮き彫りにしたことが注目すべき点と言えます。

現在はあらゆる業界、企業においてDXの推進が叫ばれていますが、本格的なDXに向けた取り組みを加速していくためには、単に新たにAIやアナリティクス、IoT、クラウドなどの先端テクノロジーを導入したり、それらに精通したエンジニアやデータサイエンティストなどのデジタル人材を確保するだけでは十分ではありません。

「2025年の崖」レポートはそうした新たな取り組みを進めること以上に、老朽化した既存システムを刷新することの重要性を説いています。

以下はレポートの抜粋資料になりますが、端的にまとめるとレガシーシステムが残存することにより、IT人材やIT投資がレガシーシステムの保守・運用に縛られてしまうという問題があります。この結果、企業活動を構成するヒト・モノ・カネのうち、ヒトとカネがある程度固定化されてしまい、DXを推進する上で欠かせない人材や資金が圧倒的に足りないという状況に陥ってしまうのです。

同レポートがまとめた調査結果によると、実際、日本企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、約7割の企業がレガシーシステムがDXの足かせになっているとの見方を示しています。

レガシーシステムのリスク
レガシーシステムのリスク

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

年間12兆円もの経済損失を生むリスク

さらに、前述したようにレガシーシステムの温存はDXの足かせになるだけでなく、2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失をもたらす一因となるおそれがあります。このため、企業単位におけるIT施策上の課題というよりも、日本が直面している経済的課題のひとつとしても捉えることができます。

こうした塩漬けにされたレガシーシステムは、もちろん一朝一夕にできたものではありません。多くの企業はこれまで長年にわたって段階的に基幹系システムの改修を進めてきました。レガシーシステムの刷新、いわゆるモダナイゼーションの歴史を振り返ると、「2000年問題」対応のため大規模改修が一斉に行われた第1次モダナイゼーションブーム、そしてメインフレーム技術者の定年退職が本格化した「2007年問題」に端を発した第1次モダナイゼーションブームなど、業界を挙げて大規模に対処してきた経緯もあります。

つまり、レガシーシステムというのは、そうした時代の波を乗り越えながら今まで使われ続けてきたシステムと言えます。しかし、当時を知る熟練技術者は転職や定年退職などにより劇的に減少しており、既存システムの構造や保守、運用がますますブラックボックス化し、システムの中身を詳しく把握している人が誰もいないという状態が増えています。

また、過去に何度か行われた大規模改修についてもシステムの中核部分には手を付けず、修正領域を中心に刷新を行うケースがほとんどだったことから、根本的な技術的課題が残されたままになっているケースが少なくありません。

先細るサポート体制、メインフレーム製造から撤退するメーカーも

さらに、大手企業の基幹系システムの多くはメインフレーム上に構築されていますが、日本国内では需要の落ち込みを背景にメインフレームのハードウェア製造からの完全撤退や事業縮小を発表する動きも広がっています。既に日立は2017年にメインフレームのハードウェア開発からの撤退を発表しており、今後はメインフレーム上で動くシステムの動作をサポートする体制が先細っていくのは避けられない状況です。

一方、システム開発を手掛けるベンダー企業においてもメインフレームで多く使われている「COBOL」などの言語に習熟したエンジニアの多くが定年退職を迎え、現場を離れています。また、今後の需要が見込めない”枯れゆく言語”を新たに覚えようとする若手エンジニアはいないため、エンジニアの世代交代が進まない原因にもなっています。実際、COBOLに関しては情報処理推進機構(IPA)が2019年に国家試験である「基本情報技術者試験」の対象言語から除外したことが話題になりました。

維持コストだけが上昇し、手を付けられない状況に

これらの結果、担当者できる人材の育成、確保が難しいレガシーシステムに対する保守・運用サービスを継続するために、ベンダー企業がサービス費用を値上げせざるを得ないという状況も起きています。2025年の崖レポートが指摘するように、こうした流れは時間が経てば経つほどさらに悪化するのは目に見えています。レガシーシステムを維持するコストだけが上昇し、やがて手を付けられないほど企業の負担が大きくなってからでは手遅れです。

その意味でレガシーシステムを刷新するモダナイゼーションに向けた取り組みは、企業がDXを推進する上でも欠かせないアプローチと言えます。

モダナイゼーションの難しさ

しかしながら、レガシーシステムから脱却し、モダナイゼーションに本格的に舵を切るためには、以下のような難しい課題が存在するのも事実です。

<モダナイゼーションを推進する際に直面する課題>
・レガシーシステム刷新によりシステムの価値は高められる半面、現状の業務を大きく変革するわけではないため、投資効果に対する経営の理解を得にくい。

・システムがブラックボックス化している課題認識は存在するものの、システム自体は問題なく稼働しているため、現状は誰も困っていない。

・「2025年の崖」レポートが指摘したような将来的なリスクに担当者が気づいていても、今すぐ対処しなければ課題ではないため、抜本的な解決案が先送りされやすい。

2025年に向けたシナリオ策定と実行の重要性

このため、「2025年の崖」レポートでは各企業が以下のような取り組みを2021年から2025年にかけて推進し、来たる崖に備える必要があると指摘しています。

・経営戦略を踏まえたシステム刷新を経営の最優先課題とし、計画的なシステム刷新を断行する(業種・企業ごとの特性に応じた形で実施)

・不要なシステムの廃棄、マイクロサービスの活用による段階的な刷新、協調領域の共通プラットフォーム活用などにより、リスク低減を図る

その上で、こうしたレガシーシステムからの移行を進めることで、企業はデータを活用した本格的なDXを実行できると説いています。

つまり、レガシーシステムを刷新することは、あらゆる企業がDXを推進し、デジタル企業に生まれ変わるための基盤づくりとも言えるでしょう。

おわりに

今回は「2025年の崖」をテーマにレガシーシステムが抱える課題についてご紹介しました。実際、DXを推進する上では、こうした老朽化したシステムを刷新し、新たな基盤として先端のデジタル技術やデータとの連携を図っていく取り組みが欠かせません。

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