AIエンジニアの給与水準とは――ベトナムの最新事情もご紹介

AIエンジニアの給与水準とは――ベトナムの最新事情もご紹介

AI(人工知能)を活用した需要予測システムや顧客コミュニケーションの自動化を実現したAIチャットボットなど、近年はさまざまなビジネス領域でAIの活用が広がっています。その一方、先端技術であるAIを活用できる人材はまだまだ限られており、高まるニーズに対して人材の育成や確保が追いついていないという現状があります。大きなビジネス価値を生み出す可能性が高いAI技術を持つ優秀な人材をめぐっては、グローバルの大手企業が好待遇で採用を進めるなど世界中で獲得競争が激しくなっており、人材市場でも大きな注目を集めています。そこで今回はIT業界で、AI人材の中核となるAIエンジニアの給与水準についてみていくことにします。

そもそもAI人材とは

独立行政法人情報処理推進機構が発行する「IT人材白書」では人工知能(AI:Artificial Intelligence)について、「機械学習、画像処理、音声処理、自然言語処理及び最適化等の技術を用いて学習・認識・推論などの人間の知的能力を人工的に実現したソフトウェアやシステムを指すもの」(2018年度調査より)と定義しています。

AI人材の定義

同白書ではその上で、それらを扱う人材を「AI人材」として以下の3つに分類しています(「IT人材白書」2019年版)。

AI 研究者 <エキスパートレベル>
AI を実現する数理モデル(以下、「AI モデル」という。)についての研究を行う人材。AI に関連する分野で学位(博士号等)を有するなど、学術的な素養を備えた上で研究に従事する、AI に関する学術論文を執筆・発表した実績があるか、少なくとも自身の研究領域に関する学術論文に日頃から目を通しているような人材を想定。
AI 開発者 <エキスパートレベル>
AI モデルやその背景となる技術的な概念を理解した上で、そのモデルをソフトウェアやシステムとして実装できる人材(博士号取得者等を含む、学術論文を理解できるレベルの人材を想定)。
<ミドルレベル>
既存の AI ライブラリ等を活用して、AI 機能を搭載したソフトウェアやシステムを開発できる人材。
AI 事業 企画 <エキスパートレベル>
AI モデルやその背景となる技術的な概念を理解した上で、AI を活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出すことができる人材(博士号取得者等を含む、学術論文を理解できるレベルの人材を想定)。
<ミドルレベル>
AIの特徴や課題等を理解した上で、AIを活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出すことができる人材。

出典:「IT人材白書」(独立行政法人情報処理推進機構)第2部 第3章 人工知能に携わる人材).

この3つの分類のうち、ビジネス現場でAI開発者やAI事業企画に対するニーズが高まっており、具体的には前者にはデータ・サイエンティストやAIエンジニア、後者にはAI導入支援コンサルタントなどの職種が含まれます。今回はこのうち、ソフトウェアの開発現場で活躍の幅が大きく広がりつつあるAIエンジニアにフォーカスを当ててみていくことにします。

AIエンジニアの給与水準

米国の巨大テック企業であるGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)をはじめ、海外ではAIやデータサイエンス、アナリティクスなどの高い技術をもつ優秀な人材に高額の給与水準を提示し、自社の技術力の強化を図る動きが進んでいます。こうした流れを受け、日本でも近年は優秀なデジタル人材を囲い込むために例外的に高額の給与を提示する企業も増えています。

AIエンジニアなどの高度デジタル人材を好待遇で迎える日本企業の事例

例えば、富士通、NTTデータ、NTTコミュニケーションズなどの大手IT企業では、AIなどに高い専門性を持つ人材を年収3,000万円前後(年俸制)で受け入れる制度を用意しています。

企業名 対象者と報酬目安(年俸制)
富士通 AIやセキュリティーの分野で高い能力を持つデジタル人材(3,000万ー4,000万円)
NTTデータ AIやIoTで高い専門性を持つ技術者(3,000万円)
NTTコミュニケーションズ AIやIoTで高い専門性を持つ技術者(3,000万円)

日本では他のエンジニア職種と大差ない実態も

とはいえ、こうした好待遇で迎えられるAI人材は全体のごく一部であり、あくまで例外的な存在であるのが実態です。経済産業省のリポートによると、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めているユーザー企業においてもAIエンジニアを含むさまざまなデジタル人材の採用を強化していますが、「IT人材の給与水準は、全社的な給与水準とほぼ変わらない傾向が見られる」と分析しています。

実際、同省がまとめた以下の図表によると、製造系システム子会社で求人が出されているAIエンジニアの年収水準は450万円-700万円のレンジとなっており、他のエンジニア系職種と比べて特段の差が見られないケースもあるようです。

言語別で比較した給与水準とは

AIの開発・運用で使われることの多い主要言語には以下のような言語が含まれますが、総合人材サービスを展開するパーソルキャリアが発表した「2020年プログラミング言語別/年代別の平均年収ランキング調査」によると、20代~40代までは「R」が最も平均年収が高い傾向にあるとの調査結果が示されています。


Python
Java
JavaScript
C
C++
R
Haskell

パーソルキャリアは本調査で20代、30代、40代、50代の各年代別にアンケート調査を実施しており、結果について以下のようにまとめています。

・20代で平均年収が一番高いプログラミング言語は「R」476万円、一番低い言語は「F#」312万円

・30代で平均年収が一番高いプログラミング言語は「R」569万円、一番低い言語は「PHP」467万円

・40代で平均年収が一番高いプログラミング言語は「R」753万円、一番低い言語は「Go」539万円

・50代で平均年収が一番高いプログラミング言語は「C++」635万円、一番低い言語は「Objective-C」403万円という結果となりました。

20代~40代までは「R」が最も平均年収が高い傾向にあるということがわかりました。

出典:「2020年プログラミング言語別/年代別の平均年収ランキング調査」(バーそるキャリア)

AIのための標準言語としてはPythonがメジャーですが、パーソルキャリアの調査ではPythonとならび、機械学習やデータマイニングの現場で多く活用されているRを扱えるエンジニアの市場価値が高いことが浮き彫りになっていると言えるのではないでしょうか。

ベトナムのAIエンジニア事情とは

このようにAIエンジニアの給与レンジにはかなり幅があるというのが正直なところといえますが、世の中にAIを活用したビジネスやサービスの事業化がますます増えていく中、今後もAIエンジニアに対する需要は増加傾向にあるのは間違いありません。このため、今後は日本国内でAI人材の確保がますます難しくなる可能性があることから、中国やインドをはじめとした新興国で高度AI人材を発掘し、活用する動きも徐々に加速しています。

弊社SHIFT ASIAではベトナムを拠点にオフショアテスト・開発サービスを展開していますが、ここではベトナムのAIエンジニアの実情についてもご紹介したいと思います。

平均給与は3,000USD以上

ベトナム人のITエンジニアの就業環境などについてまとめた”Vietnam IT Market Report - Developers Recruitment State 2021”によると、ベトナムの機械学習エンジニアおよびAIエンジニアの平均給与水準は月額3,054米ドルと、一般のITエンジニアの中で最も平均給与が高いことが分かりました。職種別に平均給与をまとめた上位トップ10ランキングの中ではCTOやCIOの経営層、テクニカルアーキテクトやマネジャーに次ぎ、7位にランクインしています。ホーチミン市の平均月収が約300米ドル(2020年)と言われている中、約10倍の給与を得られるという点では「非常に稼げる職種」と言えるでしょう。

なお、職種別で最も平均給与が高いのはCTO・CIOクラスで、月額5,776米ドルという結果になっています。

ベトナムにおけるIT業界の役職別平均給与トップ10

順位 役職・月額平均給与
1位 技術担当経営層(CTO/CIO):5,776米ドル
2位 技術ディレクター/エンジニアリング・マネジャー:4.165米ドル
3位 ソリューション・アーキテクト:4,069米ドル
4位 テクニカル・アーキテクト:3,959米ドル
5位 ITマネジャー:3,768米ドル
6位 クラウド・アーキテクト:3,121米ドル
7位 機械学習/AIエンジニア:3,054米ドル
8位 ブリッジSE:2,234米ドル
9位 DevOpsエンジニア:2,057米ドル
10位 データ・サイエンティスト:2,032米ドル

出典:Vietnam IT Market Report - Developers Recruitment State 2021, published by TopDev (https://topdev.vn).

2021年に成長する業界第1位は「AI・クラウド」

このほか、同調査では「2021年に成長すると思う業界は?」との設問に対しては回答したエンジニアの43.5%が「AI/クラウド」と答えており、2位の「FinTech/決済」(32.4%)を大きく上回るなど、ベトナム人エンジニアの間でもAIやクラウド領域は成長分野であると期待されています。給与水準の点ではまだ日本よりは割安感はあるものの、グローバル規模で需要が拡大する中、ベトナムのAIエンジニアの給与水準は今後もグローバル水準に引き寄せられる形で上昇が続く可能性が高く、日本との給与格差も縮まっていくと思われます。

おわりに

今回の記事では、AIエンジニアの給与水準をテーマに日本やベトナムにおける動向をご紹介しました。

実際、ベトナムでは現地の若くて優秀なエンジニア層を活用し、AIサービスをベトナムで開発し、日本や他国で展開するといったビジネスモデルを取り入れている日系企業もスタートアップを中心に増えており、今後はオフショア開発においてもAIやデータ分析などを活用したソリューションの開発ニーズも高まってくると予想されます。もし、AIや機械学習などベトナムの最新テクノロジー事情にご興味がございましたら、以下のお問い合わせからもお気軽にご連絡ください。

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