はじめに
デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)についてこれまで以下の通り連載してきましたが、第4回はDX人材に求められるスキルについて解説します。
<連載記事一覧>
1. あらためてデジタルトランスフォーメーション(DX)とは
2. DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業の特徴や事例とは
3. DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な人材とは
4. DX人材に求められるスキルとは ←本記事
DX人材に求められるスキルとは
前回3回目の記事「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な人材とは」では、専門的にDXを推進する人材は大きく分けて5つのタイプに分けられることをご紹介しました。あらためて以下に再掲しますが、DX推進にはこうした多様な人材の強みを結集させることが欠かせません。
1. ビジネス・アーキテクト:
DXの取組においてのゴールを定義し、経営層や社内外の意思決定者とコミュニケーションを取りながらゴールの達成に向けて推進する人材。
2. デザイナー:
ビジネスや顧客視点を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発プロセスを策定し、デザインをリードする人材。
3. データサイエンティスト:
DX推進において、データを活用した業務改善や新たなビジネスの創出に向け、データの収集・分析体制の設計から実装・運用までを担当する人材。
4. ソフトウェアエンジニア:
DX推進において、デジタル技術を活用した製品やサービスのシステム設計、ソフトウェアの実装・運用を担う人材。
5. サイバーセキュリティ:
デジタル環境での業務プロセスにおけるサイバーセキュリティリスクを軽減する対策を担う人材。
その一方、大なり小なり習熟度には差はあるものの、これらの人材に共通したスキルセットというものも存在します。そこで、今回はDXを推進する人材に必要なスキルについて探っていきたいと思います。
DX人材に求められる5つのスキルカテゴリー
DXを推進する人材にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。情報処理推進機構が公開している「デジタルスキル標準」では、5つのカテゴリーと12のサブカテゴリーに分けられています。
1. ビジネス変革(戦略・マネジメント・システム、ビジネスモデル・プロセス、デザイン):
「ビジネス変革」カテゴリーでは、ビジネス戦略やシステム全体の最適化を行うスキルに加え、業務プロセス分析や収益モデルの設計、持続可能な成長を実現するためのマーケティング・ブランディングのスキルが定義されています。
また、顧客のニーズに基づくデザインスキルも含まれ、ユーザー調査から製品のプロトタイプ設計、検証に至るまでのスキルも定義されています。これらのスキルは、DXの目的である企業価値の向上を達成するうえで重要度の高いスキルであると考えられます。
2. データ活用(データ・AIの戦略的活用、AI・データサイエンス、データエンジニアリング):
データやAIの戦略的な活用方法、分析手法、そしてデータ活用のための基盤設計に関するスキルを定義しています。情報が溢れる現代において、データから得られるインサイトを活用することは、DXを推進する人材にとって必要不可欠なスキルの1つといえるでしょう。
3. テクノロジー(ソフトウェア開発、デジタルテクノロジー):
DXを推進するうえで、テクノロジーとデジタルテクノロジーに関するスキルも求められます。具体的にソフトウェアの設計・開発・運用の技術、チームでの開発スキル、Web・クラウドインフラ構築が定義されています。
IoTやエッジコンピューティングなどのデジタル技術、生成AIやメタバースなどの新技術トレンドへの理解も求められ、これらのスキルを活用することでDXを円滑に推進できるでしょう。
4. セキュリティ(セキュリティマネジメント、セキュリティ技術):
DXを推進する際にはセキュリティを考慮する必要があります。「セキュリティ」カテゴリーでは、組セキュリティ体制の構築・運営、リスク評価、法制度の理解、インシデント対応、事業継続、プライバシー保護といったスキルについて定義されています。
設計・開発段階でセキュアな製品を生み出すスキル、運用保守でのセキュリティ監視、リスク対応能力も定義されており、これらのスキルにより、安全で効率的なDX推進を実現できるでしょう。
5. パーソナルスキル(ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル):
パーソナルスキルには、サブカテゴリーとして、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルが記載されています。ヒューマンスキルには2つのスキル項目が定義されており、1つめのリーダーシップは、目標達成のビジョンを共有し、関係者が協力しやすい環境を作ることが求められます。2つめのコラボレーションは多様な価値観の調整や合意形成を行うスキルが必要になります。
コンセプチュアルスキルには、ゴール設定、創造的な問題解決、批判的思考が含まれ、状況の変化に対応しながら改善を続ける適応力も求められます。
垣根を越える意識を持つ
もちろん、企業がこれらのスキルをすべて兼ね備えたDX人材を探すことは容易ではありません。このため、各メンバーがどの領域に強みを持つ人材なのかを判断しながら、それぞれの良さを活かす形で適材適所に配置を行うことが重要になります。
また、個人レベルで重要になるのが、DXに関するリテラシーを底上げしていこうという意識(マインドセット)を持つことです。例えば、自分自身が一人のエンジニアとしてDXプロジェクトに関わった場合、自分の専門分野ではないビジネス・サービス設計領域や組織・プロジェクト管理についてもアンテナの感度を上げておき、どん欲に知識を深めるということはキャリアの面でも有効なアプローチになります。
あるいは、データサイエンティストではないからといってデータ分析や関連の技術動向を他人任せにしておくのではなく、「この技術は事業にどのように役立つのか」、「今後どのような技術が業界で主流になっていくのか」といったレベルで関心を深めることで、技術やトレンドに対するリテラシーを深めることが可能です。
ソフトスキルの重要性
現代はDXの進展によりあらゆる業界の垣根が低くなっていると言えますが、個人レベルでもこれまでの職歴や保有スキルに縛られることなく、自ら垣根を越えていこうとするマインドセットを持つことは今後ますます重要になっていくでしょう。実際、そうした意識を持つ人材が異なるスキルを持つデジタル人材と一緒に経験を積むことで、「武者修行」のような形でデジタル関連のスキルアップを図る取り組みも増えています。
実際、デジタル技術の領域は絶えず新しい技術や活用法が誕生し、変化のスピードが非常に速い世界です。このため、常に最新の技術やトレンドを理解しておくことが求められています。その意味では、現在、保有している技術力やビジネス的な方法論などのハードスキルの価値にとらわれず、常に新しいことにチャレンジする意識を持ち、主体的にチームや組織を動かしていけるような高いソフトスキルを持った人材の価値は今後も高まっていくと思われます。
おわりに
今回はDX人材に求められるスキルについてお伝えしました。実際、DXではまだ誰も答えを持っていない未知の領域を目指す新規プロジェクトも少なくないため、ご紹介したスキルを活かしながらも、新しいことにチャレンジし、学んでいく姿勢や意識は非常に重要になります。そうしたマインドセットも目に見えないスキルとして、DX人材には欠かせないと言えるでしょう。
なお、DXに関連した連載記事は以下にまとめていますので、是非ご覧ください。
<連載記事一覧>
1. あらためてデジタルトランスフォーメーション(DX)とは
2. DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業の特徴や事例とは
3. DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な人材とは
4. DX人材に求められるスキルとは
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