「2025年の崖」と ERP 2027年問題
2018年に経済産業省はDXレポートを発表し、アーキテクチャ・プログラミング言語・既存の基幹系システム(いわゆるレガシーシステム)が複雑化・ブラックボックス化しているため、2025年以降、その維持・管理コストがIT予算の9割以上に達するリスクを警告しました。「2025年の崖」というタイトルでも知られる同レポートでは、IT人材不足に重なる事態により企業の国際競争力の減退や12兆円もの経済損失が生じる可能性を指摘しており、IT業界を中心に大きな注目を集めたことは記憶に新しいところです。このほか、基幹システムをめぐってはERP最大手のSAP社がERP 6.0の標準サポート(SCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客関係管理)機能を追加したSAP Business Suiteなど)を2027年末までに終了する「2027年問題」が控えています。
こうした課題に対応するためには、現時点で「ERPの刷新や基幹システムの再構築に着手することが欠かせません。ただ、人材や専門知識が限られる中、実際にどのように進めればいいのか、頭を悩ませる企業担当者も少なくないと思います。
ERP刷新/基幹システム再構築においては、下記が大きな課題として挙げられます:
①国内IT人材の枯渇
②業務有識者不足
③基幹システム導入における、ベンダー企業への依存性の高さ
① 国内IT人材の枯渇
システムの見直しには既存システムに関する深い知見を持つ技術者と、新たに導入を検討する先端技術に詳しい技術者の両方が必要となります。レガシーシステムの刷新、いわゆるモダナイゼーションの歴史を振り返ると、「2000年問題」対応のため大規模改修が一斉に行われた第1次モダナイゼーションブーム、そしてメインフレーム技術者の定年退職が本格化した「2007年問題」に端を発した第1次モダナイゼーションブームがありました。つまり、レガシーシステムというのは、そうした波を乗り越えながら今まで使われ続けてきたシステムと言えます。しかし、当時を知る熟練技術者は転職や定年退職などにより劇的に少なくなっており、ERP/基幹システムのブラックボックス化に拍車をかけていると言われています。
例えば、レガシーシステムで多く使われているCOBOLなどの古いプログラミング言語を知るエンジニアには高齢のエンジニアが多く、定年退職などにより年々減少しています。また、若手エンジニアはAIなどの最新技術を優先し、古いプログラミング言語を学ぶ機会がないため、この分野に対応できる新しい技術者が育たず、結果古い言語を扱えるエンジニアは減っていきます。レガシーシステムに使われている言語を知らないエンジニアばかりになれば、自ずとそのシステムはブラックボックス化してしまいます。
実際に、大手企業で運用されているERP/基幹系システムの過半数が導入後20年以上経過しており、2025年には21年以上稼働し続けているERP/基幹系システムが6割に達するという調査もあります。このように2020年代後半には多くの企業がシステム老朽化の時代に直面しますが、保守・管理できる人材は年々減り続けています。
そのため、システム見直しのタイミングが遅くなればなるほど人材不足という問題は深刻化していきます。
② 業務有識者の不足
ERP刷新/基幹システムの再構築の際に重要となるのが開発時、導入時のテスト作業です。ERP/基幹システムは会社の資産を管理するシステムであり、特にお金に関わる部分に関してミスは許されません。よくあるテスト手法として、データ移行後に新旧の両システムでの出力や表示の比較などを行いますが、こういったテストであれば知識は不要で誰にでも実施は可能です。しかし、実際の業務の流れに沿っての検証や、業務観点での確認など、業務知識を持った人でなければできないテストも実施しておかないと、実際に運用が開始されてからクリティカルな不具合が発生するという事態も起こりえます。
そのため業務にある程度精通した人材が必要になってくるのですが、先述の通りIT人材の不足により、業務知識のある人材の多くは開発に取られている状況であり、業務知識を持ったテスト人材の確保が難しくなっている状況です。
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③ ベンダー企業への依存
デジタル化が進み、働き方の変革する社会で、企業ビジネスの多角化・多様化などにより、あるものに重ねる形でシステムが統合され、複雑化したり互換性がとれていないものが動いているケースが多くみられます。IT部門と使う側の現場の温度感の違いにより、重要視されるべきシナリオが検証されないままローンチしたり、ベンダーにすべてを任せてしまったりとERP/基幹システム導入自体に主体性の欠如という課題が存在しています。
ソリューション
ERP刷新/基幹システムの再構築には、こういった人材不足や有識者不足という課題を解決していく必要があります。人材不足を解消し、プロジェクトを成功へ導くためには、外部のコンサルタントや知見のあるエンジニア、オフショア人材を上手く組み合わせた体制の構築、社内のコア人材を早期に教育していくことが鍵になります。
特に導入時のテスト作業において人材不足の影響は大きく、有識者不足のため導入先のユーザーがテストを実施しなければならず、通常業務に支障が出たりと負担が大きくなってしまう例も多くみられます。またその場合、エンジニア視点でのテスト漏れなどが多く発生し、稼働後に大きな問題が発生するような事例も出ています。
テスト作業はERP刷新/基幹システム再構築においてとても重要な作業になり、以下のようなテストを適切な人材が実施することで安全に稼働を迎えることができます。
・プログラムベースの単体テストをプログラム知見を持ったエンジニアが実施
・製品観点での機能テストを製品知識を持ったエンジニアが実施
・業務観点での機能テストを業務知識を持ったエンジニアが実施
・実際の業務フローに沿ったシナリオテストを業務知識を持ったエンジニア/ユーザーが実施
・不具合を洗い出すためのアドホックテストをテスト専門エンジニアが実施
SHIFT ASIAのERPパッケージ向けサービス
SHIFT ASIAでは、SHIFTグループの海外拠点として日本国内のIT人材不足に対応すべくバイリンガルエンジニアによる開発・ソフトウェアテスト業務を行っています。その中で国内外のERP/基幹システムへの評価実績が多くあり、ERP/基幹システムに関する業務ナレッジが貯まっています。
これらのナレッジを以下のように落とし込み属人性を排除した「ERP特化サービス」として提供しています。
・業務ベースの教育を行ったERP特化型のテストエンジニア
・SAP専門組織/ABAPエンジニア
・業務ベースのERP専用のテスト項目
・業務フロー一覧
・テストデータ一覧
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