振り返りのフレームワーク「KPT法」とは|そのメリットや進め方、実施のポイントについて

振り返りのフレームワーク「KPT法」とは|そのメリットや進め方、実施のポイントについて

日々新しい何かが生まれ、あらゆるものが常にアップデートされ続ける現代は、個人や組織も継続したアップデートが不可欠になっています。つまり、新たな挑戦や学習、それらを通じたナレッジの積み重ねにより、絶えず改善を重ねる取り組みの重要性が高まっていると言えるでしょう。
特にIT業界において、その傾向はより顕著です。日進月歩で新たな概念やテクノロジーが生まれ、またそれらを活用したサービスが生まれ続けるなかで、仕事においても日々新しいことにトライしながら、改善をしていくということが求められています。

しかしながら、多くの業務を抱えて毎日を忙しく過ごすなかで、仕事がいわゆる「やりっぱなし」になってしまい、実施したことに対してきちんと振り返りを行い、改善することにまでなかなか手がまわらないという人が多いのではないでしょうか。

本記事では、そのようにおざなりになりがちな「振り返り」について、それを継続的に実施し、今後の改善につなげるための振り返りのフレームワークである「KPT法」(以降KPT)についてご紹介します。

KPTとは

KPTとは振り返りのフレームワークの一つであり、仕事やプロジェクトなどを対象に「Keep(成果が出ていて継続すること)」「Problem(解決すべき課題)」を洗い出し分析した上で、具体的な改善策としての「Try(次に取り組むこと)」を検討するという流れで行われます。

Keep・Problem・Tryについて、よりわかりやすい表現を使えば、Keep=「良かったこと」、Problem=「悪かったこと、直したいこと」、Try「どうやって解決・改善するのか」と言い換えられます。
このフレームワークはKeep・Problem・Tryの3つの頭文字をとって「KPT」と呼ばれており、日本語では「けーぴーてぃー」や「ケプト」と読まれます。

もともとはシステム開発の領域で使われていたフレームワークで、アジャイル開発における振り返りの手法としても多くの組織で活用されています。
近年ますます活用が進むアジャイルやスクラムでは振り返り(レトロスペクティブ)は重要なイベントの一つとされており、変化が早いからこそ日々の仕事を通じて学習し、改善を促進するために振り返りを一連の業務プロセスの中に組み込むことが一般的です。

スクラムについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。宜しければ合わせてご参照ください。
スクラムとは|スクラムの定義や特徴、体制とチーム内の役割

しかしKPTはシステム開発だけに限らず、ビジネス全般において汎用的に役立つフレームワークであり、様々な業界や組織で用いられています。またプロジェクトチームや部署のメンバーを集めて複数人で実施するのはもちろん、個人でも活用することができます。

そんな便利な振り返りのフレームワークであるKPTについて、具体的にどんなメリットがあるのかをご紹介します。

KPTのメリット

1.課題の早期検出・解決

KPTでは現在生じている課題(Problem)の洗い出しおよびその具体的な解決策であるTryについてそれぞれ検討を行うため、課題の早期検出と解決に非常に有用です。
特にKPTでは具体的な改善のアクションがその場で参加者間において合意できることから、次にすべきことが明確になり、かつ目線が揃うことからスムーズに動き出しやすいというメリットもあります。
そのためKPTは定期的な開催に加えて、何か課題が生じたときにその検出と解決のために不定期で実施することもオススメです。

2.コミュニケーション促進やナレッジの共有、それらを通じた組織力強化

KPTでは参加者全員が意見を出し合い議論を行うことから、ある意味半強制的に互いにコミュニケーションを取りあう機会を提供します。
それによって新しい気付きが生まれたり、ナレッジの共有が促進されたりすることで、組織力の強化や生産性の向上が期待できます。
特に、KPTでは付箋に書くという形で意見のアウトプットができることから、自分から発言することが苦手な人であっても意見を述べやすいというメリットもあります。これによって、埋もれがちな重要な意見やインサイトが得られることもあります。

3.継続的な改善のスパイラルの創出

ないがしろにされがちな振り返りをKPTを通じて定期的に実施することで、日々の経験や学びが改善につながり、少しずつ組織やプロセスがアップデートされ洗練されていきます。
特にKPTでは具体的な打ち手(Try)の検討と実践、その結果の振り返りまでもがセットで行われることから、KPTを繰り返すたびに「少しずつではあるが、確かに改善している」という実感が得られやすく、ポジティブなスパイラルが生まれることでモチベーションの向上も期待できます。

KPTの基本

続いて、KPTを実際に行う上で押さえるべき基本的な事柄についてご紹介します。

実施するタイミング

基本的には特定のルールに基づいて定期開催を前提として実施します。
よくある例としては、プロジェクトの終了時など仕事の区切りがついたタイミングや、毎週・毎月の決まった日などが挙げられます。
重要なのは、KPTを一連の業務プロセスの一つと明確に位置付けた上で、定例会議のような形で実施するタイミングをきちんと明文化し浸透させることです。
不要な意思決定を省く定期開催がリズムを生み、改善のスパイラルにつながります。
もちろん、定期的なKPTに加えて、日々の業務において課題が生じたタイミングで適宜実施することも良いでしょう。

使用するもの

ホワイトボードと付箋、ペンがあれば十分です。
ペンは少なくとも人数分、付箋はなるべく多めに用意しておきましょう。
KPTにおすすめのツールとしてTrelloなどのツールが紹介されることもありますが、コミュニケーションの促進やスムーズな進行をするために、なるべく実際に会議室などに集まって、顔を合わせてホワイトボードと付箋を使って行うのがベストだと考えます。
在宅勤務などで実際に集まることが難しい場合にはツールの使用を検討する必要がありますが、KPTはシンプルなフレームワークであることからオンラインで同時アクセスが可能なスプレッドシートなどでも十分です。

所要時間

基本的には一時間程度が目安になります。
時間が長すぎると集中力が続かないということもありますし、重要度の低い細かな事柄が多くなり整理が難しくなるというデメリットもあります。最大でも一時間半程度に抑えるのが望ましいでしょう。

参加人数

多くても10名以下が適切な人数です。これまで実施してきた経験をベースに考えると、5名前後が比較的実施しやすいサイズかと思います。
人数がそれ以上になると意見を整理してまとめることが難しくなりやすいため、大規模なチームでは参加者を一定以上のレイヤーに限定したり、より小さなチーム単位で実施したりといった工夫が必要です。
また、もちろん一人で実施することも可能ですし、2~3名の小さなチームであればその人数で十分です。

KPTの具体的な進め方

ここまでで主にKPIの概要について紹介をしてきましたが、ここからは具体的なKPTの進め方についてご紹介します。
なおKPTには様々な進め方がありますが、ここでは基本的な進め方を例として取り上げます。

KPTのフォーマット準備

ホワイトボードを用意して、下図のように左上にKeep、左下にProblem、右にTryのエリアを作ります。

Keep・Problemを書き出して貼り出す

最初に参加者全員が各自で「Keep(成果が出ていて継続すること)」「Problem(解決すべき課題)」を付箋に書き出し、ホワイトボードのそれぞれのエリアに貼っていきます。
ここでは細かなことであっても気にせず、ブレストのような形で思いついたものをどんどん書き出していくことでより多くの意見を洗い出すことがオススメです。

Keep・Problemに対するディスカッション

各自が書いて貼り出したKeep・Problemに対して、全員がそれぞれの意見を発表しディスカッションをしながら分析を行います。
Keep・Problemとした理由や、それぞれの要因・原因は何なのかをきっちり掘り下げて真因を明らかにすることが重要です。
ここではKeepを更に良くするという観点もありますが、Problemがある場合は特にそちらを中心に議論と分析を進めて課題の解決にフォーカスすることがより重要です。
もし数が多い場合は、重要度に応じて優先順位をつけて議論する対象を絞る、優先度に応じて時間の配分を調整するなどして、特に重要なProblemについてはしっかりと議論の時間を取ることを心がけましょう。

具体的なTryを決める

Keep・Problemのディスカッションを通じて明らかになった真因に対して、具体的にどういったアクションを取るのかをTryとして書き出します。
Tryは実際に実施することが前提になることから、実行・評価しにくい抽象的な表現は避ける必要があります。
「~をすること」というように、明確に次のアクションに移せるものとしてTryを設定しましょう。

なおここで決めたTryに関しては、次回以降のKPTでその実施結果や進捗を評価し、再度Keep・Problemを出す際の対象に含めても良いでしょう。
Tryした内容が実際に成果を挙げていればKeepとし、Tryした内容がうまくいかなかったりProblemが解決しなかった場合はProblemとなり、再度解決策を検討してTryするといった流れで改善を続けていきます。
果たしてそのTryがうまくいったのか・いかなかったのか・その原因は何か、と評価し改善していくためにも、Tryは具体的に設定することが重要となるのです。

KPTの成功のポイント

KPTには、それをより効果的かつ効率的に行うためのいくつかのポイントがあります。
こちらでは特に重要となるポイントについてご紹介します。

心理的安全性の担保

KPTでは、参加者から重要なインサイトを吸い上げやすくするために、各自が思いついたことをそのまま意見として発表しやすい環境を実現することが非常に重要です。
特にKeepとProblemを洗い出す際には、各自の意見への批判を避けるようにすることで、多様かつたくさんの意見を集めやすくなります。
特に本人が「意見として言うまでもない些細なこと」と考えている一方で、実はそれが重要なことであるといったケースもあります。KPTでは、そういった普段は集めにくい意見も自然と集まるような、自由に意見を出しやすい空気感を醸成するように努めましょう。

ファシリテーターの設置

特に参加人数が多くなる場合は、往々にして議論が発散しやすくなります。
KPTの大きな目的として、「課題の発見」と「改善策であるTryを導き出すこと」があることから、特に重要な課題へのフォーカスや時間配分の調整など、KPTをファシリテートする担当者をアサインすることが有効です。
一例として、プロジェクトにおいて実施する場合は、プロジェクトマネージャーが担当することが一般的です。

連続性・継続性の意識

KPTは定期的に、何度も繰り返すことが極めて重要です。これはKPTが正しく機能するための必須条件といっても過言ではないでしょう。
「前回設定したTryの結果はどうだったのか」という観点を含めることで連続性が生まれ、徐々に物事が改善していくことを実感しやすくなります。
KPTを繰り返すたびに新たな学びがあり、自身もチームも進歩していくという実感は、継続の大きな動機となり、また日々の業務にリズムを生みます。

さいごに

本記事ではKPTの概要からメリット、具体的な進め方やそのポイントについて紹介いたしました。
KPTは振り返りをKeep・Problem・Tryの3つの要素に分解することで、各自が何を考えれば良いのかが明確になることから、KPTは初めて実施する場合でもそこまで迷うことなく実施しやすい、非常にシンプルなフレームワークです。

振り返りというと、やった方が良いということはわかっているものの、なんとなく面倒に感じて実施が不定期になりがちで、また実施しても改善にまで結びつかずやりっぱなしになりがちですが、KPTは内容の理解が容易で、特に用意するものもなく手軽に行えることから、大きな負担もなく繰り返し実施しやすいという特徴もあります。
KPTを繰り返すことで実際に業務がよりスムーズになったり、課題の発見・改善を通じて成長感や貢献感を得られやすいといったことから、KPTは実施のしやすさと成果への繋がりやすさの両方を持つフレームワークとも言えます。
KPTはフレームワークなので、こちらで紹介した内容は基本的な枠組みであり、細かなやり方は組織やプロジェクト、人によって柔軟に変えていっても良いとされています。

しかし、KPTを通じて成果を挙げるためには「継続すること」は厳守する必要があります。課題の検出と解決策の検討、それを実施するということを一つのサイクルとして継続的にまわしていくことで、対象が何であれ少しずつ良くなっていくということがKPTの最も重要なポイントと言えるからです。
変わり続ける状況から生じる課題への対応がますます重要となっていく現代において、振り返りのフレームワークであるKPTをより活用してみてはいかがでしょうか。