CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)の活用は数十年前から始まりました。建設、機械工学、ロボット工学など、物理的なモノづくりにおいて高い複雑性が求められる分野では、今や欠かせないコア技術となっています。
近年のAIの目覚ましい発展によってあらゆる領域でAIの活用が進むなかで、もしAIエージェントがCADソフトウェア上の操作を自動化し、パイプラインを構築し、生産性を向上させてくれるとしたらどうでしょうか?
その答えが「MCP(Model Context Protocol)サーバー」です。(MCPサーバーについては後述します)
この記事では、CADソフトウェアとMCPサーバーの関係性、そしてそれがどのようにCADを使った業務を革新するのかを探っていきます。
※本記事は、SHIFT ASIAでBIMエンジニアを務めるPAXTONが当社の技術ブログに投稿した記事を編集部が翻訳・編集したものです。
<原文はこちら>
MCP Server: The “game changer” for CAD industry
CADを活用する業界の歩みと、直面している課題
CADの歴史は、機械工学における機構の発展とともに始まりました。
かつて、複雑な部品を製作するには、理想の形にたどり着くまで何度も試作品(サンプル)を作り直すしかありませんでした。その後、コンピュータ技術の台頭と「人の手で行っていた作業をコンピュータで効率化したい」という意志が結びつき、実製作の前にすべてをシミュレーションできるソフトウェア、すなわちCADが誕生したのです。
現在では、用途に合わせて以下のような多様なCADソフトウェアが利用されています。
- 建築・建物設計:Revit, AutoCAD, SketchUp など
- 機械工学:SolidWorks, Inventor など
- 製造:Mastercam, SolidCAM など
複雑さがもたらす課題
物理的な複雑さを扱う以上、CADソフトウェア自体も非常に複雑なものになります。膨大な機能とボタンが並ぶ画面は、初心者にとっては圧倒されるものです 。この複雑性は、以下のような問題を引き起こします。
- 高い難易度:習得には多大な努力が必要で、マスターするには数年かかることもあります。
- 繰り返しの多いタスク:業務を遂行するために、7〜8個の細かな機能を何度も繰り返し実行しなければならない場合があります。
- 標準化と精度の維持:手作業の工程が多いほどミスが発生しやすくなり、CADにおいて最も重要な「精度」に影響を及ぼします。
- 独自の解決策の必要性:既製のソフトウェアだけでは、ユーザーのニーズを100%カバーすることはできません。ユーザー自身で独自の「ツール」や「パイプライン」を作成する手段が求められています。
従来の解決策
これらの課題の多くは、必要な機能を自動的に実行するパイプラインを作成することで解決できます。
CADソフトウェアは通常、コーディングを通じてソフトとやり取りするためのプロトコルであるAPIを提供しており、これを利用して特定の問題に対する独自の解決策を構築したものが「プラグイン」と呼ばれます。

プラグインは、ユーザーとソフトウェアプロバイダー双方がCADをより良くしようと試みた最初の取り組みでしたが、自分の専門分野に集中したいエンジニアにとって、コーディングは依然として複雑すぎるものでした。
そこで、ソフトウェアプロバイダーは別のアプローチとして、ドラッグ&ドロップやノードベースの手法を考案しました。これは、ノードを配置してワイヤーで接続することで完全なパイプラインを作成できるもので、コーディングの複雑さを解消する優れたソリューションとなりました。
その代表的な例が、Dynamo(ダイナモ)とGrasshopper(グラスホッパー)の2つです。

しかし、これらも依然として自ら手を動かし、ワークフロー全体を論理的に構築する必要があり、専門知識が不可欠であることに変わりはありませんでした。
ゲームチェンジャー|AIエージェントとMCPサーバー
ここで登場するのが、AIエージェントとMCPサーバーによる革新です。
MCPとは「Model Context Protocol(モデル・コンテキスト・プロトコル)」の略称です。
簡単に言えば「AIが外部のツールやデータと安全にやり取りするための窓口のようなもの」です。
このMCPという窓口があることで、AIは本来直接操作できないCADソフトに対しても、指示を出したり情報を読み取ったりできるようになります。この仕組みを活用することで、MCPサーバーを通じて、AIエージェントが自動でパイプラインを構築し、データのやり取りを最適化することができます。

なぜMCPサーバーが解決策になるのか?
ユーザーがプロンプトを入力するだけで、AIエージェントがパイプラインを構築し、CAD上で実行して結果を返します。これにより、以下のメリットが得られます。
- 学習曲線の緩和:複雑な操作体系を覚える必要がなくなります。
- 自動化による効率化:あらゆる処理を自動で完結させることが可能です。
仕組みは以下のとおりです。

仕組みとアーキテクチャ
多くのCADソフトウェアは「オフライン」で動作するため、MCPサーバーとの通信にはWebSocketプロトコルが適しています。
- ユーザーの指示:AIにプロンプトを入力します。
- MCPクライアント:MCPサーバーの特定のツールを通じてリクエストを送ります。
- MCPサーバー:WebSocket経由でCADソフトウェアと対話します。
- CADソフトウェア:データを返します。
- MCPサーバー:データを受信し、MCPクライアントに送り返します。
- フィードバック:AIエージェントはデータを受け取り、必要に応じて処理を繰り返します。
特に重要なのは、AIが生成したコードを実行し、エラーが発生した場合にはそのエラーをAIにフィードバックする仕組みです。これをシステム化することで、AIは自身のステップを調整し、より精度の高い結果へ自律的に近づくことができます。

まとめ
MCPサーバーは、CADソフトウェアに計り知れない可能性をもたらします。AIの能力を活用することで、生産性を飛躍的に向上させます。
もちろん、AIがすべての業務を代行できるわけではありません。しかし、タスクやデータ、進捗状況の管理、そして特にデータドリブンなワークフローにおいては、AIエージェントはこれ以上ない強力なパートナーとなります。
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