はじめに
近年はクラウドサービスが普及し、仕事やプライベートで普段何気なく使っている便利なサービスが実はクラウドベースで提供されているといったことは、もはや珍しくはなくなりました。その一方で、さまざまなクラウドサービスが登場する中、しばしば目にするのが「SaaS」という言葉です。本記事ではSaaSとは何か、そしてSaaSは他のクラウドサービスと何が違うのかについて解説したいと思います。
SaaS(サース)とはSoftware as a Serviceの略称
まずSaaSは「サース」または「サーズ」と発音するのが一般的で、正式名称は”Software as a Service”と書きます。つまり「サービスとしてのソフトウェア」という意味の英語を短く略した用語です。一言で言うと、ソフトウェアをユーザー側(クライアント)に導入して使用するのではなく、サービス提供事業者側(サーバー)で稼働しているソフトウェアをインターネットを介して利用する形式のサービスです。
Microsoft365はSaaSの代表例
わかりやすい例を挙げれば、2010年ごろまではパッケージ製品として店頭で買うか、あるいはPCにプレインストールされているのが主流だったマイクロソフトのOffice製品があります。当時は、WordやExcelなどのOfficeを構成する製品群を使うには、こうしたパッケージ製品を買うかオンラインでダウンロードして自分のPCにインストールする必要がありました。この場合、一度製品を購入し、インストールしてしまえば、ライセンスを持つユーザーはその後は追加費用を払うことなく、使い続けることができました。
こうした買い切り型のライセンスに対し、2011年に同社が正式に提供を開始した「Office 365」(現在のMicrosoft 365)は毎月定額を支払うことでOffice製品をサービスとして利用できるサブスクリプション型のライセンスであり、SaaSの代表例と言えます。
SaaSの特徴とメリット
次にSaaSの特徴について考えてみたいと思います。ソフトウェア製品をインターネットを介して手軽に利用できるSaaSにはさまざまなメリットがあり、以下に代表的なものをご紹介します。
インターネットさえあれば管理不要で常に最新版を利用できる
まずSaaSの特徴としてインターネットが利用できる環境にあれば、いつでも利用可能であるということが挙げられます。自分が使用するPCやスマートフォンなどの端末に該当のソフトウェアがインストールされていなくても、インターネットを通じてサービスのアカウントにログインすれば利用できるので、使用する端末を問わないというメリットがあります。
また、パッケージ製品ではインストールはもちろん、バージョン管理やアップデートなどをライセンス購入者であるユーザー自身が行う必要がありますが、SaaSではサービス提供事業者がバグの修正や更新などの設定を行うため、ユーザーはいつでも最新版を利用することができます。特に、セキュリティー機能の強化など、サービスを利用する上で生じるリスクへの対応もユーザーに代わって事業者が行ってくれるのは、管理面でも大きなメリットのひとつと言えるでしょう。
初期費用を抑えられる
SaaSサービスの多くは「インターネットがあればいつでも好きな時に利用できる」という形式を取っています。多くは従量課金制や毎月決まった料金を支払う定額制の料金体系を採用しており、買い切り型の製品と比べると導入時にかかる初期費用を抑えられるというメリットがあります。このため、例えば似たようなSaaSサービスを比較検討したい場合、複数のサービスをお試し感覚で契約し、実際の使い勝手を試しながら自分にとって最適なサービスを絞り込むといったことも可能になります。
これが買い切り型の製品であれば、購入後に最終候補から外れた場合は無駄になってしまいますが、SaaSの場合は不要になったらすぐに契約を停止すれば、こうした無駄を防ぐことができるというわけです。つまり、SaaSは新規の取り組みをまずは「小さく始めたい」というニーズに比較的マッチしていると言えるでしょう。
複数人で同時に作業ができる
また、サービスを構成するデータなどがサービス提供事業者側(サーバー)で管理されているため、SaaSでは複数のメンバーが同じファイルにアクセスし、共同でデータを編集・更新・管理することが容易にできます。パッケージ製品では、しばしば作業途中のファイルのバージョン管理がメンバー間でバラバラになってしまった結果、共同作業の結果がうまく反映されないといったようなことが起こり得ますが、SaaSでは、クラウド上に置かれたファイルに各メンバーが同時にアクセスし、更新をかければ、入力内容を即座に反映させることが可能です。
SaaSサービスの代表例
さきほどSaaSの代表例としてマイクロソフトの「Office 365」(現在のMicrosoft 365)を挙げましたが、現在SaaSベースのサービスは企業向け、個人向けを問わず、あらゆる領域で拡大を続けています。以下に代表的なサービス事例を挙げますが、もちろんこれ以外にもさまざまなサービスが存在します。
また、最近では社内でさまざまなSaaSサービスが使われるようになる中、複数のSaaSをまとめて管理できる「マネーフォワード IT管理クラウド」のような”SaaSを管理するためのSaaSサービス”などが登場している点も注目されます。
- Microsoft 365・・・ビジネス向け総合パッケージ
- Salesforce・・・SFA(営業支援システム)・CRM(顧客管理システム)
- ServiceNow・・・複数システムのデータを集約し、統合的な運用管理の実現するITSM(ITサービスマネジメント)ツール
- freee、マネーフォワード・・・クラウド会計ソフト
- Zoom・・・オンライン会議ツール
- Slack、Chatwork・・・ビジネスチャットツール
- マネーフォワード IT管理クラウド・・・複数のSaaSを一元管理するSaaSマネジメントプラットフォーム
- Gmail・・・Webメール
- Canva・・・オンライングラフィックデザインツール
PaaS、IaaSとの違いとは
このほか、SaaS以外では「Paas」、あるいは「IaaS」という言葉を目にする機会も少なくないと思います。PaaS、IaaSもSaaSと同様に、クラウドサービスの一形態であり、前者は「パース」、後者は「イアース」、もしくは「アイアース」と発音されます。
このうち、PaaSというのは”Platform as a Service”の略称で、「サービスとしてのプラットフォーム」という意味の英語を短く略した用語です。具体的には、インターネットを介してアプリケーションを稼働させるための基盤(プラットフォーム)をサービスとして提供する形態を指しており、プラットフォームにはネットワークやサーバー、OS、ミドルウェアなどを含みます。
一方、IaaSといのは”Infrastructure as a Service”の略称です。SaaSやPaaSと同様に、「サービスとしてのインフラストラクチャー」という意味の英語を略した言葉になりますが、これはインターネットを介してシステムの稼働に必要となるサーバーやCPU、ストレージなどをサービスとして提供する形態を指しています。
言葉だけではわかりにくいと思いますので、SaaS、PaaS、IaaSがそれぞれ提供するサービスの違いを以下の図版にまとめてみました。
上の図版で水色で示しているのが、事業者がサービスとして提供する機能になります。
つまり、大まかに言ってしまえば、SaaSはサーバーからアプリケーションまでを事業者がまとめて提供するサービスであるのに対し、IaaSはサーバーからネットワークのインフラの提供に特化したサービス、そしてPaaSはSaaSとIaaSの中間に位置するサービスとして捉えることができます。
一般的にSaaSはアプリケーションを含めてサービスを提供しているため、契約すればすぐにサービスを利用することが可能です。このため、会計や経理、コミュニケーション、コラボレーションなどの特定のサービスの利用を目的に導入するケースが多いと言えます。一方、アプリケーションの提供を含まないPaaSやIaaSについては導入後に自前である程度、利用環境を整える必要があります。このため、導入の目的としては、クラウドサービスを通じた外部リソースの活用を通じ、開発環境を整備するという狙いがあるケースが多いと言えます。
このようにSaaSをベースとしたサービスというのは、初めから必要な機能の提供をすぐに受けられるという意味では非常に便利です。ただ、機能やカスタマイズの自由度という点ではPaaSやIaaSに劣る面があるのも事実です。
以下の図版のように実際、SaaS、PaaS、IaaSにはそれぞれの良さやメリットがあります。このため、ユーザーは自らの状況や実現したい目的に応じ、必要なサービスを選択するとよいでしょう。
余談にはなりますがTaaSという言葉も広く使われるようになってきており、TaaSとは「Testing As A Service」の略称になります。「サービスとしてテストを行う」ビジネスやプラットフォーム、考え方のことを指します。
おわりに
今回はクラウドサービスの一形態であるSaaSについてご紹介しました。このうち、記事の中の「SaaSサービスの代表例」でも触れたマネーフォワードなどはベトナムに開発拠点を設け、サービスの機能改善に取り組んでいることで知られています。
このようにベトナム人エンジニアを活用し、SaaSに限らず、さまざまな自社サービスの改善や新規開発に取り組む企業は増加傾向にあるため、ご自身が日ごろ何気なく使っているSaaSサービスの裏側を実はベトナム人エンジニアが支えていたというようなケースも今後は増えていくかもしれません。
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