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2024年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向 オフショア開発

更新日:2025/02/10 SAブログ編集部

2024年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向

はじめに

本記事では、昨年に引き続き、2024年のオフショア開発の最新動向をお伝えします。2024年は、ローコード・ノーコード開発の台頭、IoTの導入、生成AIの急速な普及など、IT業界全体で大きな変化がありました。これに伴い、オフショア開発業界にも大きな変動が生じています。

今回は、『オフショア開発白書(2024年版)』(以下、同白書)の内容に加え、ベトナムで実際にオフショア開発を行うSHIFT ASIAが得たリアルな情報をもとに、最新のトレンドや業界の動きを詳しくご紹介します。

2023年のオフショア開発の動向について気になる方は、以下の記事も併せて参照ください。

2023年版『オフショア開発白書』から読み解く、オフショア開発の最新動向

オフショア開発を検討する企業の動向

まずは、オフショア開発を検討する日本企業(クライアント)の動向についてみていきましょう。

従業員規模の変化

同白書によると、オフショア開発の相談があった企業の従業員規模別割合は以下の通りです。

  • 10名以下:16%
  • 11~50名:8%
  • 51~100名:2%
  • 101~500名:24%
  • 501~1000名:10%
  • 1001~5000名:18%
  • 5001名以上:22%

前年と比べると、主に以下のような変動がありました。

  • 100名以下の企業割合が62%→26%と大幅に減少
  • 特に10名以下で38%~16%と減少
  • 5001名以上の割合は14%→22%に増加

このデータによれば、従業員数100名以下、特に10名以下の中小規模の企業によるオフショア開発のニーズが減少しているようです。

その背景には、2023年と同様の傾向が見られます。中小規模の企業の多くは、オフショア開発の主な目的として「コスト削減」を掲げていました。しかし、オフショア先の人件費の高騰や円安の影響により、その効果が薄れてきています。 

その結果、中小企業を中心に、オフショア開発から内製化やニアショアを含む国内開発へと回帰する動きが進んでいる可能性があります。その一方で、従業員数5001名以上の企業の割合は14%→22%に増加しています。

大企業においては、「ITリソース不足」の課題が深刻化しており、円安の影響を受けずに海外のIT人材を確保しようとする動きが加速しています。実際に、SHIFT ASIAでも2023年以前と比べて、大企業からの問い合わせやウェビナーの参加が増えており、大企業によるオフショア開発ニーズが高まっていることが実感としてもあります。また、オフショア活用の手法も、従来のアウトソーシングにとどまらず、業務提携や自社開発拠点の設立、さらにはM&Aの検討へと拡大しているようです。

業界別割合の変化

続いて、同白書によるオフショア開発の相談があった企業の業界別割合は以下の通りです。

  • IT・ソフトウェア:58%
  • メーカー:21%
  • サービス業:8%
  • 広告・出版・マスコミ:3%
  • コンサルティング(海外サービスのエージェント):2%
  • 建築・不動産:2%
  • エンタメ:2%
  • 研究・教育:2%
  • コンサルティング:2%

こちらのデータによると、2023年の66%からわずかに減少したものの、「IT・ソフトウェア」分野のエンドユーザーの割合は58%と依然として過半数を占めています。そのため、IT業界において大きな変化がない限り、2025年以降もこの傾向が続くと推測されます。

また、IT業界に続いて「メーカー」や「サービス業」でもオフショア開発が進んでおり、特に「メーカー」においてはその割合が13%から21%へと増加しています。メーカーでは、設計開発や組み込み開発が中心となる一方、IoT開発など先端技術の活用も広がっています。一方、「サービス業」では、モバイルアプリやWebシステム開発に関する相談が多い傾向にあるようです。

2024年のオフショア開発委託先国別ランキング

続いて、2024年のオフショア開発の検討先の国別ランキングを見ていきましょう。
同白書によると、以下のようなランキングになっています。

  1. ベトナム(42%)
  2. 中国(26%)
  3. その他(8%)
  4. インド(7%)
  5. ミャンマー(4%)
  6. 東欧諸国・フィリピン(3%)
  7. 韓国・バングラデシュ・タイ(2%)
  8. シンガポール(1%)

人気のオフショア開発先として、2023年に続いてベトナムが1位を継続

オフショア開発の検討先国別ランキングでは、引き続きベトナムが1となっています。2021年から2024年まで、4年連続でベトナムが1位を継続している形です。

2021年・2022年・2023年の直近三年間はその割合もほぼ変わらず、ベトナムは50%近い割合で推移していましたが、微減となり2024年は42%になりました。ベトナムがオフショア開発先として人気を集める理由としては、以下のような理由が考えられるでしょう。

  • 国策などを背景に、ITの専門教育や日本語教育を受けた人材が増加
  • 日本向けのオフショア開発サービスを提供する会社の数が膨大で、選択肢も豊富(ハノイ・ホーチミンの二大都市だけではなく、ダナン、フエ、カントーのオフショア開発企業も選択可能に)
  • 経験・スキルともに高く、かつAIやブロックチェーンをはじめとする先端技術にも精通したITエンジニアが豊富
  • 語学力が高く、日本語・英語対応のITエンジニアも豊富
  • 単価が上がってきてはいるものの、まだ一定のコストメリットを期待できる水準であり、品質とコストのバランスが良い

一方で、優秀なIT人材の確保競争は激化しており、特に高スキル層は欧米企業との取り合いが進み、人件費の上昇要因となっています。また、円安の影響もあり、かつてのようなコストメリットは低下しつつあります。加えて、ベトナム政府が英語教育に力を入れる中、欧米市場への関心が高まり、日本市場のプレゼンスが相対的に低下する可能性も指摘されています。

それでも、約半数の企業がオフショア先としてベトナムを選択し、新規案件も引き続きベトナム中心に展開されています。親日的な国民性や勤勉さ、地理的な近さなどの強みは依然として魅力的であり、安心して取引できる開発会社が多いことから、今後も日本企業にとって重要なオフショア拠点であり続けると考えられます。

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中国はカントリーリスクの影響と中長期的な判断が必要

昨年は4%とミャンマーと同率の中国が2024年は26%に増加し、2位となりました。もともと市場規模が大きく、多数のエンジニアが存在することが要因となり、今回の回復につながったと考えられます。

しかし、カントリーリスクの高まりや単価上昇の影響を受け、中国からベトナムやその他の国へのシフトが進んでいる動きも見られます。特に2024年に入ってからは、中国のリスクを踏まえ、国内回帰(リショア)や他国への移行を検討する企業が増えてきています。

一方で、中国企業の技術力は近年飛躍的に向上しており、AIや先端技術分野では日本を上回る水準に達しているため、中国でなければ対応できない案件も増加しています。そのため、中国オフショアは従来の「コスト削減のための開発拠点」ではなく、インドのように「グローバル開発体制の一環」としての位置付けへと変化しつつあると言えるでしょう。

また、中国で長年培われた技術やノウハウを活かしたいと考える企業も多く、完全に撤退するのではなく、一部の拠点を維持しながら他国との分散戦略を取るケースも見られます。特に、国内に中国人エンジニアを抱える企業では、オフショア開発においても円滑なコミュニケーションを実現できる強みがあり、引き続き中国を活用する選択肢を模索しているようです。

さらに、グローバル展開を進める企業の中には、中国に既存の拠点を持ち、それを活かしてオフショア開発を新規に検討するケースもあります。

このように、中国からのシフトは全体的なトレンドではあるものの、企業ごとの事情によっては引き続き有力なオフショア先となる場合もあります。発注企業は、カントリーリスクや単価高騰の影響を慎重に見極めつつ、中長期的な視点で最適な開発拠点を選定していくことが求められるでしょう。

オフショア開発案件別ランキング

こちらでは、2024年のオフショア開発案件別ランキングを紹介します。
同白書によると、以下のようなランキングになっています。

  • Webシステム開発(業務系):29%
  • Webシステム開発(サービス系):27%
  • スマホアプリ開発:16%
  • 基幹系システム開発:13%
  • サイト制作(HP制作・EC構築など):6%
  • 先端系(AI・ブロックチェーンなど):6%
  • 組み込み開発:3%

Webシステム開発(業務系)が29%と最も多くの割合を占め、前年の15%から大幅に増加しました。一方で、Webシステム開発(サービス系)は27%と2位となりましたが、前年の34%から減少しており、分野ごとの発注傾向に変化が見られます。

また、スマホアプリ開発(16%)や基幹系システム開発(13%)の発注も一定の需要を維持しています。特に、SPA・PWA・クロスプラットフォーム対応の案件が増加し、AWSやAzureなどのクラウド環境での開発が一般化しています。これらの技術トレンドは今後も加速すると予想されます。

AI・ブロックチェーンなどの先端技術分野(6%)のオフショア開発も拡大しており、日本国内で不足しているエンジニアリソースを補完する動きが活発化しています。かつてはオフショア開発での対応が難しかったAI・ブロックチェーン・IoT領域も、特にベトナムを中心に対応可能な企業が増加しています。優秀なエンジニアの確保を目的に、先端技術の実績を重視する企業が増えているのが特徴になります。当社SHIFT ASIAでも、AIやブロックチェーンに関する相談が増えており、この傾向が顕著に表れています。

サイト制作(6%)も回復傾向にあり、前年の3%から増加しました。ITリソース不足を背景にオフショア活用が進み、デザイン領域にも対応できる企業が増加しています。ただし、サイト制作は単発・小規模案件が多く、今後の需要増加は限定的と考えられます。また、エンジニア単価の上昇を考慮すると、今後は微増または横ばいの傾向が続く可能性が高いでしょう。

このように、オフショア開発はWebシステムや先端技術分野を中心に成長を続ける一方、分野ごとに異なる動きが見られます。今後の市場動向を注視しながら、課題に合わせて最適な活用方法を検討することが重要になるでしょう。

オフショア開発の契約形態割合

続いては、同白書の内容を踏まえ、オフショア開発の契約形態についての最新動向についてご紹介します。

  • 請負:33%
  • ラボ:49%
  • SES(準委任契約、業務委託):14%
  • その他:4%

ラボ契約が増加傾向に

オフショア開発会社にシステム開発などを委託する際の契約形態としては、一般的に「請負契約」と「ラボ契約」の2種類があります。まずは「請負契約」から始め、徐々に「ラボ契約」へ移行するのが一般的ですが、国内のエンジニア不足が続く中、継続的なリソース確保を目的に最初から「ラボ契約」でスタートするケースも増えています。

ラボ契約によるラボ型開発は、事前に仕様が確定していなくてもスムーズに開始できるのが特徴です。また、中長期的に同じ人材を確保できることや、短期的なトライアルがしやすいというメリットもあります。一方で、ラボ型開発は発注側のマネジメントが求められるため、適切に運用するには一定のノウハウが必要となります。

同白書によると、オフショア開発案件の契約形態では、ラボ契約が49%、請負契約が33%と、ラボ契約が過半数を占めています。ラボ契約の割合は請負契約の1.5倍に達し、多くの企業がこの契約形態を選択していることがわかります。その背景として、オフショア開発を継続的に委託する企業が多いことが挙げられます。特に自社プロダクトの運用・保守や追加開発を長期的に行う必要がある企業にとって、ラボ契約は適した契約形態となっています。

また、5年〜10年以上オフショア開発を継続活用している企業が全体の50%以上を占めることも同白書で明らかになっており、オフショア開発を今後さらに拡大しようとする企業が多いことがうかがえます。

お伝えしたとおり、ラボ型開発はオフショア開発のトライアルとしても活用しやすいため、これからオフショア開発を活用したい、あるいは将来的に自社のオフショア開発拠点の設立を検討したいという場合は、まずはラボ型開発を活用してみるのも良いでしょう。

わたしたちSHIFT ASIAでは、ユーザー企業さまにより柔軟に活用いただけるよう、最小1人月からのラボ型開発にも対応しております。
ラボ型開発にご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

オフショア開発案件の予算規模やエンジニアの単価

こちらでは、オフショア開発案件の予算や各国のエンジニアの単価について、紹介します。

オフショア開発案件の予算規模

  • 1億円~:35%
  • 5000万円~1億円:8%
  • 2000万円~5000万円:16%
  • 1000万円~2000万円:10%
  • 500万円~1000万円:8%
  • 300万円~500万円:2%
  • 300万円以下:0%
  • 発注しなかった:21%

昨年のボリュームゾーンだった「500万~1000万円」規模の開発案件から大幅に拡大し、現在は「1億円以上」の開発が35%を占め、最も多い結果となりました。さらに、5000万円以上の案件を含めると全体の約43%に達しており、多くの企業が積極的に予算を投じていることがわかります。また、300万円以下の小規模開発は消滅し、全体的に開発予算の増加傾向が見られました。

従来、オフショア開発の主な目的は「コスト削減」でしたが、近年では「リソース確保」の側面が強まっている傾向にあります。現地エンジニアの単価上昇により、以前のような大幅なコスト削減は難しくなりつつあります。また、300万円以下の案件は請負契約の最低基準を満たせないことが多く、小規模案件の発注が減少する結果につながっています。

この傾向を踏まえると、スモールスタートで様子を見る企業が多かった従来の状況から、現在は本格的な成長期に突入していることがわかります。開発規模の拡大に伴い、戦略的にオフショア開発を活用する企業が増加し、継続的な開発や大規模案件への移行が進んでいます。オフショア開発は、もはや単なるコスト削減の手段ではなく、事業成長のための重要な選択肢へと変化していることがうかがえます。

各国のエンジニアの単価

オフショア開発を委託する企業が、積極的に多くの予算をつぎ込んでいることをお伝えしましたが、現地のエンジニアの単価上昇の影響を受けていることも理由として含まれる可能性があります。下記は各国のエンジニアの平均単価になります。

2023年と比較して、全体的な傾向としては、単価が下がっているような印象を受けますが、単価が上がっているベトナム、フィリピン、バングラデシュ、インドについて詳細にみていきましょう。

ベトナム

ベトナムのオフショア開発における人月単価は、2023年と比較して横ばいか微減している職種が多い状況です。一方で、ブリッジSEの単価はやや上昇し、他の職種と比べても標準的な職能単価に近づいてきています。

ベトナムの開発単価は例年、比較的安価な水準を維持しており、職能が向上しても大幅な単価上昇は見られませんでした。しかし、近年欧米企業や韓国企業からの投資が急増しており、かつて日本がトップだった投資額ランキングにも変化が生じています。

日本の存在感が相対的に低下しつつある中、日本向けのオフショア開発企業やエンジニアが欧米市場へシフトする動きも見られます。その結果、欧米市場の単価水準に影響を受け、今後ベトナムの開発単価が変動する可能性も考えられます。

フィリピン

フィリピンの単価は、全体的に上昇傾向にあります。2022年以降の円安の影響を受けながらも、これまでフィリピンの単価は比較的安定していました。しかし、今回は特にプログラマーの単価が大きく上昇しており、結果としてベトナムよりも水準が高くなっています。そのため、コストを重視する企業は、より単価の低いベトナムを検討するケースが増えると考えられます。

フィリピンは、インドやバングラデシュと同様に英語が得意な国であり、多くの企業が欧米市場をターゲットにしています。そのため、日本語人材の確保が課題となるケースが多く、ブリッジSEの単価は高い水準にあります。日本語での開発体制を整える場合、今後はコストメリットを出しにくくなる可能性があるでしょう。

バングラデシュ

続いて、バングラデシュになりますが、特にPMの単価が大きく上昇しています。バングラデシュは隣国インドと同様に英語が得意な国であり、多くの企業が欧米市場をターゲットにしています。そのため、日本向けの開発に対応できるブリッジSEやPMの人材は非常に希少であり、単価も大きく上昇傾向にあります。

また、インドの開発会社が上流工程を担当し、バングラデシュが下流工程を担うといった連携も見られ、バングラデシュの市場は多様化が進んでいる状況です。

インド

インドのオフショア開発における人月単価は、6カ国中で最も高い水準となりました。インドのオフショア開発企業は、英語が堪能な背景も相まって、日本市場よりも欧米市場を重視する傾向があり、欧米からの需要拡大を受けて単価が上昇してきましたが、近年は高止まりしている状況です。

インドのオフショア開発企業は、単なるコストメリットではなく、技術力の高さや豊富なリソース、コンサルティングやアナリティクスといった付加価値の提供を強みとする企業が増えています。

特に、高度なシステム開発やデータ分析、AI開発などの分野での実績が豊富な企業が多く、日本企業にとっても魅力的な選択肢となっています。

SHIFT ASIAについて

わたしたちSHIFT ASIAは、ソフトウェア品質保証・第三者検証のリーディングカンパニーである 株式会社SHIFT(東証一部上場)の海外戦略拠点として、ベトナム・ホーチミンでマニュアルテストからテスト自動化やセキュリティテスト、インスペクションなどのソフトウェアの品質保証事業を手掛けながら、近年はオフショア開発にも事業領域を拡大させてきました。

SHIFT ASIAは、IT人材不足を解決する手段として、海外の優秀なエンジニア層を取り込み、彼らのリソースを活用しながら日本のお客様のニーズに応えるべく、優秀なベトナム人エンジニアの採用と育成に力を入れています。

オフショアでの開発やテストに関して、お困りごとなどがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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