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2022年はシステム開発にもカーボンニュートラルの波が到来か、グリーンITとの違いとは? ビジネス・ITトレンド

更新日:2022/10/20 SAブログ編集部

2022年はシステム開発にもカーボンニュートラルの波が到来か、グリーンITとの違いとは?

はじめに

日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル、脱炭素化)を目指すと宣言したことを受け、2021年以降あらゆる業界でカーボンニュートラルに向けた取り組みに関心が集まり始めています。こうした動きはIT業界にも徐々に波及するとみられていることから、2022年はシステム開発の現場でもカーボンニュートラルを意識することが今まで以上に増える可能性があります。

そこで今回は、ITシステムやソフトウェア開発におけるカーボンニュートラルの取り組みに触れながら、従来の「グリーンIT」との違いなどを探ってみたいと思います。

カーボンニュートラル(脱炭素化)とは

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みやニュースなどを紹介している環境省の脱炭素ポータルは、カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることと定義した上で次のように補足しています。

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

※人為的なもの

カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減 並びに 吸収作用の保全及び強化をする必要があります。

出典:脱炭素ポータル:カーボンニュートラルとは

ご存じのとおり、温暖化による気候変動問題は世界各国の政府が連携して取り組んでいる地球規模の課題になっています。具体的には2015年に採択された「パリ協定」は2020年以降の新たな国際枠組みとして、先進国だけでなく、すべての国と地域で温室効果ガス排出削減などに取り組むことを定めました。また、パリ協定では世界全体の長期目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5度に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)」が示されました。

さらに、日本政府は2021年4月に2030年に温室効果ガスを2013年比で46%削減することを目指す新たな指針を発表しました。こうした政策目標は国レベルで努力するだけでは実現が不可能であるため、企業レベルでの取り組みが徐々に本格化しつつあります。現在、あらゆる業界の企業にこうした変化の波が押し寄せており、IT業界も例外ではありません。

なお、カーボンニュートラルを日本語に言い換えた用語として「脱炭素」があります。温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロにするという意味ではカーボンニュートラルと同義であり、カーボンニュートラルに向けた取り組みやその実現を目指した社会のあり方は「脱炭素化」または「脱炭素社会」などと呼ばれています。

今なぜカーボンニュートラルが必要なのか

今あらためてカーボンニュートラルの実現が叫ばれている背景には、世界的な気温上昇に伴う気候変動に対する危機意識の強まりがあります。気象庁によると、日本の平均気温は1898年(明治31年)以降では100年あたりおよそ1.2℃の割合で上昇しており、特に以下のグラフに見られるように1990年代以降に温暖化の影響が顕著になっています。

こうした温暖化により近い将来に豪雨や猛暑のリスクがさらに高まるだけでなく、農林・水産などの一次産業をはじめとした経済活動全般に大きな影響が出ることが懸念されていることから、気候変動対策は人類にとって”待ったなし”の課題になっているのです。

Climate_change
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経産省のグリーン成長戦略が始動

こうした気候変動に対する危機意識を受け、経済産業省は2021年に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しました。これは、カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速することを通じ、重点分野を中心に経済成長やイノベーションを実現させようという試みです。

このようにカーボンニュートラルへの対応は、もはや環境意識の高い企業や経営者だけの課題ではなく、いかに持続可能な経済成長と両立させるかというフェーズに移ってきており、政策的な後押しを背景に新たなビジネス機会として捉える動きも強まっています。

IT業界もグリーン成長戦略の重点分野に

また、経産省のグリーン成長戦略では成長が期待される14分野として以下の業界を挙げていますが、この中には「半導体・情報通信産業」も含まれています。

エネルギー関連産業

1)洋上風力・太陽光・地熱、2)水素・燃料アンモニア、3)次世代熱エネルギー、4)原子力

輸送・製造関連産業

5)自動車・蓄電池、6)半導体・情報通信、7)船舶、8)物流・人流・土木インフラ、9)食料・農林水産、10)航空機、11)カーボンリサイクル・マテリアル

家庭・オフィス関連産業

12)住宅・建築物・次世代電力マネジメント、13)資源循環関連、14)ライフスタイル関連

半導体・情報通信産業のグリーン成長戦略としては、具体的には以下の2つのキーワードが取り上げられています。経産省はこの2つのアプローチを両輪としてIT業界におけるカーボンニュートラルの推進を目指していると言えます。

1)グリーン by デジタル・・・デジタル化によるエネルギー需要の効率化を推進する取り組み

2) グリーンof デジタル・・・デジタル機器・情報通信の省エネ・グリーン化を推進する取り組み

今さら聞けない「グリーンIT」とは

一方、IT業界では気候変動に関する初の国際的な枠組みである京都議定書が2005年に発効されて以降、過去15年あまりにわたって「グリーンIT」というキーワードがしばしば注目を集めてきたことはまだ記憶に新しいところです。現在、注目されているカーボンニュートラルの取り組みと従来のグリーンITにはどのような違いがあるのでしょうか。

GreenIT_image
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グリーンITとは環境負荷を低減したIT基盤を構築すること

グリーンITとは一言で言うと、地球環境への負荷を低減したIT機器や基盤、システムを導入・活用した取り組みを指します。より分かりやすく言えば、いかにしてIT機器・システムの省エネを実現するか、またはそれらを活用してどのように社会全体の省エネを達成するかという点に注力が置かれていたと言っても過言ではありません。このため、従来の取り組みではデータセンターの省電力化やサーバーの冷却・空調システムの改善や運用ノウハウなど、主にハードウェアの省エネ化という対策が議論や取り組みの中心を占めていたと言えます。

しかし、カーボンニュートラルを実現する上ではハードウェアに限定した対応だけでは十分ではありません。このため、こうした省エネ化や脱炭素化を念頭に置いた取り組みは今後ソフトウェア開発の領域でも広がっていくことが予想され、この取り組みの広がりこそ、グリーンITに代わる新たな動きとして注目されます。

脱炭素化時代のソフトウェア開発とは

では、ソフトウェア開発におけるカーボンニュートラルの取り組みとは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。実際のところ、ソフトウェアのグリーン化や省エネ化などを指標として把握するためには関連した消費電力や環境負荷を正確に計測する必要がありますが、まだ統一されたルールは整備されていないのが現状です。例えば、自分が開発したアプリの消費電力を計測し、正確にレポートしようとした場合、単純にテスター(電力計測器)をコンセントに差し込めば正確な数値が得られるわけではありません。

実際、サーバーの上には該当のアプリ以外にもOSが稼働するためのさまざまなプログラムが存在したり、仮想化やSaaSなどのソフトウェアでは該当アプリ以外の外部要素が複雑に絡み合っていたりと、1つのアプリの環境負荷パフォーマンスを正確に計測することはハードウェアよりも難しいという課題が存在します。

とはいえ、今後の方向性としてはこうした環境負荷を示す指標などの標準化作業が業界全体で進む可能性は高いと言えます。その上で、ゆくゆくは自社で開発したシステムやソフトウェアには環境負荷が低いことを示す数値や認証ラベルなどがつけられ、カーボンニュートラルにしっかり対応していることをアピールし、他社との差別化を図る動きが強まっていく可能性があるでしょう。

開発時だけでなく運用時の環境負荷にも注目

また、ソフトウェアにおける環境負荷の低減という課題は、システムやアプリを開発する企業だけの取り組みで完結するものではありません。つまり、ベンダー側が製品やサービスの環境負荷パフォーマンスをアピールするだけではなく、それらを導入・活用しているユーザー企業側においても運用時にどれだけの電力を消費しているのか、それに伴ってCO2の排出量はどのように推移しているのかなどをしっかりトラッキングできる仕組みの整備が必要と言えるかもしれません。

その意味では真の意味でのカーボンニュートラルを実現するには、業界全体を巻き込んだ取り組みが欠かせないと言えます。

無駄なシステムは環境負荷にとってはマイナスに

さらに言えば、ソフトウェア開発工程において環境負荷の低減を実現するためには手戻りを減らしたり、無駄な工程を削減したりと生産性自体の改善にもメスを入れる必要があります。例えば、テスト工程においては手広くテストを実行するのではなく、影響範囲だけに限定して効率よく実行することができれば、消費電力を抑えることができ、生産性も向上します。また、シンプルで保守性の高いコードで開発を行うことができれば、保守作業における負荷が減り、消費電力を抑えることが可能になります。

つまり、これからのソフトウェア開発にはサステナビリティの視点がより欠かせなくなっていくことは間違いありません。極論を言えば無駄で手間のかかるシステムを作ることは、環境負荷にとってはマイナスとなり、カーボンニュートラルに向けた取り組みにも反すると言えます。

カーボンニュートラル実現に向けた有効なアプローチとは

このようにIT業界におけるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みには大きな課題がありますが、先端技術をうまく活用することで取り組みを加速していくことは可能です。このうち、AWSやマイクロソフト、Googleなどの大手クラウドサービス事業者が提供するパブリッククラウドをうまく活用することは有力なアプローチのひとつです。

アクセンチュアの調査によると、自社のシステムをオンプレミスからパブリッククラウドに移行することで炭素排出量を最大84%、電力消費量を同65%も削減できることが試算されています。

出典:アクセンチュア:脱炭素はあらゆる企業の重要アジェンダに。グリーンITやエネルギーマネジメントへの取り組み

このほか、カーボンニュートラル実現に向けたアプローチとしては、開発や運用の現場で再生可能エネルギーを活用して持続可能な仕組みを構築する動きなども目に見えた具体的な取り組みとして広がっていくことが考えられます。

おわりに

今回は2022年年初の記事ということもあり、システム開発の現場でも意識しておきたいキーワードとしてカーボンニュートラルをご紹介しました。脱炭素化社会の実現に向けた取り組みはサステナビリティとも切っても切れない関係にありますが、前述のとおり別の捉え方をすれば、いかに無駄や手間を削減するかという生産性向上にも寄与するアプローチにもなり得ます。

なお、弊社SHIFT ASIAではテストサービスにおいて生産性を徹底的に追求したオペレーション管理を行っています。具体的にはSHIFT ASIAの品質保証エンジニアがテスト設計や実行を担当することによりソフトウェアテスト品質の向上はもちろんのこと、お客様が開発に専念できる体制を構築することで、さらなる品質改善や生産性向上を実現するお手伝いをさせていただいております。

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