DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業の特徴とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業の特徴とは

はじめに

前回の記事「あらためてデジタルトランスフォーメーション(DX)とは」ではDXの定義と企業を取り巻く課題についてご紹介しましたが、今回は続編としてDXに成功している企業の特徴に焦点を当ててみたいと思います。DX実現に向けた取り組みは一朝一夕にはいきませんが、成果を上げている企業にはどのような傾向があるのでしょうか。

<連載記事一覧>
1. あらためてデジタルトランスフォーメーション(DX)とは
2. DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功している企業の特徴とは ←本記事
3. DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な人材の役割とは

DX成功に求められる5つのポイント

アクセンチュアが2020年にDXに取り組む世界の企業を対象に実施した調査によると、DXに成功している企業の取り組みには他の企業とは異なる5つの傾向があることが明らかになっています。同調査は部門間の競争関係が将来の成長と広範なデジタル変革の目標達成に悪影響を及ぼしているという調査結果を踏まえ、DX推進のためには部門の枠を超えたコラボレーションが欠かせないという点を強調し、具体的に以下に掲げる5つのアクションに着手することが重要であると指摘しています。

なお、アクセンチュアは同調査で以下の2つの要件を満たした企業を「チャンピオン企業」(英語:Champions)と名付け、DXに成功している企業としてその特徴や傾向を分析しています。

  1. 2017年から2019年に、部門の枠を超えたデジタル変革投資の取り組みが収益に及ぼした影響が業界平均を上回っている。
  2. 同3年間の収益成長率が同業他社を上回っている。

チャンピオン企業の秘訣

1)  明快な共通の目的
組織にとってのデジタル変革の意味と、組織全体でのコラボレーションの必要性を明確にする。包括的な事業戦略を立て、望ましい結果を列挙するだけでは十分ではなく、具体的で多面的なデジタル変革戦略を策定し、関係者全員に周知することが重要になる。

2)  経営幹部の説明責任
組織全体でコラボレーションがうまく行えているかの説明責任を経営幹部に課す。デジタル変革を推進し、各部門における変革を成功させる1人のリーダーが責任を負うことで、成功する確率が高まる。

3)   プロジェクトの優先順位付け
部門間のコラボレーションが必要なプロジェクトを優先する。そのためには自社の資産をどこにどのように配分すればいいのかを認識した上で投資を実行し、組織全体で実行に移すことが重要になる。

4)  部門間で相互に運用できるプラットフォーム
サイロ化を招くようなソリューションの無計画な導入を避け、コラボレーションのためのプラットフォームに投資し拡張する。チャンピオン企業の多くが、デジタル・プラットフォーム同士がうまく連動し、通信し合えるようにしている。

5)   IT-OT戦略の統合
情報技術と運用技術、およびその連動の仕方について、明確なルールを定める。チャンピオン企業は情報技術(IT)チームと運用技術(OT)チームのコラボレーションについての明確なガイドラインを示すことで、ビジネスに関する高付加価値なインサイトを導き出せる環境を整えている。

出典:アクセンチュア最新調査――デジタル変革における不十分な事業部間連携が業績低下につながる(アクセンチュアニュースリリース、2020年7月)

上記のポイントを整理すると、デジタルトランスフォーメーションを実現するには組織横断型のコラボレーションを進め、全社一丸となって取り組むことが欠かせないことが分かります。

業界別では大手を中心にITや製造業で取り組みが先行

とはいえ、DXの取り組みを進め、実際に成功している企業はまだまだ少ないのが実情です。アクセンチュアが日本企業を対象に実施した「DXサーベイ」によると、業界別に眺めた場合、テクノロジー・ITでDXの取り組みが最も先行していることが示されています。その次には製造業、広告・マーケティング業界が続く一方、逆にヘルスケア、飲食、小売、人材派遣業界などはDX推進が遅れていることが分かりました。

また、企業規模で見ると、大企業では実際の投資を含むDXに関するプロジェクトが比較的進んでいるものの、中堅・中小企業は総じてDX成熟度が低い傾向も明らかになっています。DXの推進は、中堅・中小企業においても経営課題として認識されてはいるものの、予算や人材などの制約から具体的な取り組みになっているものはまだ多くはなく、アクセンチュアも「中堅・中小企業は総じてDX成熟度が低く、ようやくあるべき姿の検討などに着手し始めた段階」と指摘しています。

出典:業種別・企業規模別のDXの状況と課題が明らかに 〜DXサーベイの調査・分析結果から見る日本企業の現状(アクセンチュア)

「守りのIT」中心の日本企業

実際、DXを進める上でしばしば課題に挙げられるのが、予算が潤沢な大企業とは異なり、中堅・中小企業にはそもそもDXに投資できる予算が限られているという事実です。例えば、企業のIT関連費用の80%は現行システムの維持管理(ラン・ザ・ビジネス)に使われていると言われており、戦略的なIT投資に資金・人材をうまく配分できていない企業が少なくありません。特に日本企業はこうした既存システムの運用・保守を中心とした「守りのIT」が中心で、米国と比べて自社の企業価値向上や事業創出につながるような「攻めのIT投資」が進んでいないという問題が指摘されています。

出典:デジタルトランスフォーメーション に向けた課題の検討 ~ ITシステムに関する課題を中心に ~(経済産業省)

どの部門がDXを主導するべきか

また、そもそもデジタルトランスフォーメーションはどの部門が主導し、どのように全社に展開するのが望ましいのか、という議論も存在します。ITやデジタル技術を活用する取り組みだからといって、必ずしも現行のIT部門が主導するのが良いというわけではありません。むしろ長らく「守りのIT」に徹してきた日本企業のIT部門に企業の成長やさらなる付加価値向上に寄与するDXを託すこと自体、適切ではないケースが多いと言っても過言ではないでしょう。

DX を推進する組織として具体的には以下のような例がありますが、どの組織が主導するべきかについてはそれぞれの企業の状況によって異なり、一概には言えません。

1)  経営企画部門・社長室
経営層直轄で DX 推進室などを立ち上げ、経営戦略と合わせて全社的な変革を進めることが多い。

2)  デジタル・システム部門
既存のデジタル・システムなどの関連部門が主導してレガシーシステムを改修しながら、新たな試みの実証を行い、現場へ展開していくことが多い。

3)  既存の事業部門
先進的な事業部門が既存アセットも活用しながら変革を主導して、デジタル部門や外部の支援も得ながら、新たな取り組みを開始し、事業刷新を起こし、社内横断的に展開していくということが多い。

4)  部門横断プロジェクトチーム
社員の所属部門に関わらず、選抜や公募によって選定したメンバーが新規事業開発を行い、部門間連携をしながら新たな取り組みを進めていくことが多い。

5)  「出島」型組織、など
DX を推進する「出島」型組織や子会社を設置し、既存組織と適切な距離を保ちながら外部との協創を迅速に進めることで、共に成長を加速する例も多い。

参照:Digital Transformation (DX)~価値の協創で未来をひらく~(日本経済団体連合会)

外部パートナーとの協創は欠かせない要素に

また、いずれのパターンであっても自社だけでDXを成し遂げようとすると、部門間の壁や人材不足などに代表されるような組織の論理が障壁となることが少なくなりません。このため、上記5の「出島」型組織のように、外部パートナーとの協創を前提とした取り組みはDX成功のために、ますます欠かせない要素になっています。

例えば、技術面で言えば、自社にはないデジタル技術や関連のビジネスモデルに精通した外部パートナーとコラボレーションするケースを考えてみましょう。この場合、すべてを自社で一から賄おうとするケースよりも迅速に取り組みを推進することができますし、より広範な技術的知見やビジネスアイデアを集めるすることが可能になります。

特に日本では中堅・中小企業を中心にDXにつながる先端技術を実装できるエンジニアの確保が経営課題になっている中、自社の目指す世界を実現するために必要な技術力を有する外部パートナーとの連携は今後ますます重要になってくることは間違いありません。

過去記事「DX推進の拠点として注目を集め始めたベトナム」で取り上げたように、弊社が拠点を展開するベトナムでもベトナム人エンジニアの高い技術力を活用し、自社のDXを推進を目指す動きが出始めており、今後もこうした動向には注目です。

おわりに

今回はDXに成功している企業の特徴のほか、DXを主導する組織の例などをご紹介しました。DXはあらゆる業界で最も関心の高い取り組みのひとつであることから、今後もDX実現につながるホットな話題についてお届けできればと考えていますので、どうぞご期待ください。